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普段と代わりのない、一日だった。


最近友人となったろ組の三人と一緒に朝食を取り、授業を受けて、委員会へと向かって。


少し肌寒い日だった。秋も半ば、夜は冷える。
いつもにも増して冷える火薬庫で、いつもと同じように淡々と作業をこなしていく。


ただその日、いつもとひとつだけ違ったのは、自分より下の後輩達が実習や課題でいなかったことだ。

上級生と共に時折雑談しながら作業を進め、合間に夕飯を取り、すべて終わったのはもう月が昇る頃だった。



「兵助、そっちは終わった?」

自分の分の仕事を終え、書き損じがないか確認もし終えたとき後ろから声を掛けられた。
柔らかい物腰と豊富な知識を持つ、火薬委員会委員長だ。

「はい。確認お願いします」

先程まで自分が確認していたものを手渡す。ぱらぱらと中身を見た委員長は、やがて笑顔で言った。

「うん、さすがだね。良くできてる。じゃあもう今日は終わりにしよっか!」

ぐりぐりと頭を撫でられ、下級生に対するそれに少し気恥ずかしく思えたけれど、褒められたことは素直にうれしいのも事実。

ありがとうございます。と礼を言って、長屋に戻るため火薬庫を後にしようとした、のだけれど。


「…先輩?」


後ろから伸びてきた手に、ぐんと腕を引かれ、また中に戻される。

不思議に思って頭ひとつ分上にある顔を見上げれば、いつもと同じ柔らかな笑みを浮かべた委員長。


でも、恐い、と思った。

頭の中で、警鐘が鳴り響く。

早く逃げないと、といくら思えど、足は地に縫いつけられたかのようにぴくりともせず、ただぽかんと見上げるしかできなかった。

「ねえ、兵助」

委員長の手が、頬へと伸びる。壊れ物に触れるかのような手つき。

ぞくり、と背が戦慄いた。


「…いいこと、しよっか」


変わらない笑みが、恐ろしかった。




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