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くるしみは昇華された。
ぎしりぎしりと軋む骨も、止まることなく滴り落ちる赤色も、霞んで白む視界も。
かなしみは、過ぎ去った。
もう何も、気に病むことはない。
ただ一つだけ気がかりがあるとすれば、自分を慕ってくれた可愛い後輩達。
まだまだ危なっかしく工具を使う彼らに、もっと教えてやらなければならないことがあった。
せんぱい、せんぱいと無垢な瞳で見つめられるたび、抱きしめてよくやったなと褒めてやって。
ああでも、あれでしっかりとした子たちだから、何とかやっていけるだろうな。
まだきれいな彼らに、自分は良き先輩であれただろうか。
ふ、と視界が暗くなる。
月が隠れたかと思ったが、ただ単に目が使えなくなっただけだった。
なんて呆気ない最後だろう。看取られることなく一人朽ちて逝く。
自分に似合いの最期だ。
苦しみは昇華された。
悲しみは過ぎ去った。
許されない想いと共に、私は散ろう。
「これでおしまい」
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