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VOCALOIDには、感情がある。
ただのロボットにはない、自分で考え、そして喜怒哀楽を感じる感情プログラム。
嬉しければ笑い、哀しければ泣く。
怒りだって覚えるし、楽しいと心が弾む。
歌に心を込める為に開発された、他にはないそのプログラムは、開発された当初世界中から賛否両論が上がった。
感情を持てるなんて素晴らしい。歌に深みが出るに違いないと賞賛する声。
感情なんて不必要だ。生身の人間が歌えば良いだけの話だろうと否定する声。
様々な意見が溢れ、検討と改良が重ねられてそしてついに実用化に至った際、ひとつだけ制限された感情があった。
たとえどんな《マスター》であっても、好意を抱くように。
言うなれば、どんな酷い扱いを受けたとしても、自分の主を慕うように、憎むという感情はプロテクトが掛けられた。
憎しみを持たない、感情の不完全なアンドロイド。
けれど、怒りは完全に制御されなかった。歌に深みを持たせるという名目で作られた感情プログラムが故に、癇癪、言うなれば子どものような嫉妬や苛立ちだけはそのまま残された。
嬉しければ笑い、楽しければ心躍らせ、哀しければ涙し、怒りを感じれば癇癪を起こす。
夢のような、プログラム。
人間を作るという、人類の夢が叶った瞬間だった。
その身勝手なプログラムのせいで悲劇が起こるなど、一体誰が予測しただろう。
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