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わけが、わからなかった。


自分に覆い被さる、マスター。

呆けているうちに手を取られ、首に巻いていたマフラーできつく戒められて、その痛みにはっとしたときには、既に服はほとんど纏っていなかった。


「へえ、セクサロイド機能があるって本当だったんだな」


舐めるようなマスターの視線に、総毛立つ。

熱をはらんだ視線に、悟ってしまった。
この人は、歌わせる為に僕を買ったんじゃない。

きっと、


「いやだ…っ!」


がつっ、と鈍い音。
じわじわと頬に広がる痛みに殴られたことがわかった。

暴れようとした身体から、一気に力が抜ける。

恐くて、どうしてこんなことをされなければならないのかと悔しくて、涙が滲む。


どうにか逃げだそうと再び藻掻こうとして、けれど耳元で囁かれた言葉に、僕は今度こそ全身から力を抜いた。

ああ。

嗚呼。

やっと、マスターに会えたのに。
歌うことを、夢みていたのに。


にやりと男が厭らしく嗤う。

激痛を伴いながら進入してきた楔の熱さが、これが現実だと僕に告げた。


逆らえない。
逆らうことなんて、できない。


こんなに酷いことをされても、この人は僕の、絶対の人物で、


命令に、逆らうことなんて、

許されていないのだから。




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