五線譜
「綺麗だねぇ」
マスターが言います。
「はい、とても美しいです」
僕は返事をします。
溢れる音符をすらりとした指先で追いながら、この流れは次の楽章への布石になっていて、それが自然に、かつ美しく挿入されているのだ、と語ります。
それは、うれしそうに。
自らの曲のように。
誰よりも音楽を愛するマスター。
僕は、とても幸せです。
ボーカロイドとして、共に過ごせる者として。
たくさん曲をくれるからとか、好物のアイスを食べさせてくれるからとか、理由は色々とあるけれど。
ねえ、マスター。
今僕がどれだけ満たされているかわかりますか。
この作り物でしかない心が痛いくらいに張り詰めるのも、全部全部、貴方が愛しいからなのです。
ねえ、マスターわかりますか。
こんなにも、貴方と一緒に居ると幸せになれるんです。
ふわふわと、きらきらと、まるで陽だまりに居るみたい。
五線譜を辿る指先が奏でる、様々な音色。
音楽に関しては絶対に妥協しない、真っ直ぐな精神。
そんな貴方と出会えた僕は、なんて恵まれているのでしょう。
だから僕は歌います。
貴方のために。
貴方の歌を。
伝わりますか、届いていますか。
貴方が好きです。
大好きです、マスター。
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