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「最初に言っておくけど」
「とりあえず行くぞ。で、何」
「先生はねー止めたりしないよ。治療はしてくれるけど」

「…は?」

「だから、保健のせんせは、なんて言うか呆れてるっていうか…何だろ?」
「常習犯かよ」
「犯罪者じゃあるまいし。…でも気にはかけてくれてるみたい」


余りにも血が止まらないときとか、中々違和感が消えないときくらいしか行かないし、先生はやめろともいわない。

でもそれは、無関心とかじゃなくて、俺の性癖だと理解した上での沈黙だと思ってる。


というか、そこまで酷くなければ自分で何とか出来るし、何度もやってる分どうすればいいかもわかる。


「これくらいほっといても治るしさ、てか何で他人で、しかも今日初めて会ったばっかりのあんたが熱くなってんの」

「あんたじゃなくて、俺は矢崎皇太。さっきは帰るところだったんだけど、イスに向き合ってる変な奴が居たから声かけたんだ」

「ふ−ん。で、お節介な矢崎クンは俺をどうしたいわけ?」

「どうって、」

「俺は好きでやってんの。他人に口出しされたくないし、あんたのは余計なお世話。…それじゃ、二度と声かけないでね」


随分冷たい声が出せるものだ、と自分に驚いた。


途中で邪魔されたイライラと、異質なものを見る目が癇に障った。

別に普通に見て欲しいわけじゃない。ずっと向けられてきた目だから慣れてる。


でもなぜか、こいつにだけは、そんな目で見られたくなかった。

俺の性癖を知らなかったとはいえ、戸惑いなく俺に触れてきた人は、本当に久しぶりだったから。

だから。

そうだから、うっかり名前を教えてしまったのだ。




そこからが、俺にとっての悪夢の始まりだと知らずに。





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