4 そうして僕は死にました。 本当の愛を知らぬまま、世を去りました。 男になることも、男をやめることも出来ずに、何もかも中途半端に死にました。 死んだはず、でした。 さっちゃん、と女の人が手招きます。 さち、と男の人が抱きあげます。 神様は、どこまでも残酷でした。 どうして、あの人の子供として、再び生きなければならないのでしょう。 この幸せそうな夫婦を、ずっとずっと見なければならないなんて! 女がだめだと、男の僕を飾り立てたくせに。 僕が一等好きだと言ったくせに。 世界で一番かわいいと、言ったくせに! うそつきうそつきうそつき! 笑えるはずがありません。 僕からあの人をとった売女を、僕を重荷と嘲ったあの人を、どうして親と思えるでしょう。 こんなに憎らしくてたまらないのに。 忌々しくてたまらないのに。 早く歩けるようになりたい。 働ける年になりたい。 一人で生きていけるだけの身体になりたい。 こんなところから一刻も早く、抜け出してやるのだ。 こんな地獄に生まれるくらいなら、業火に焼かれるほうが、きっと何倍もマシだった。 ←→ |