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03 (たいせつなものは、てばなさないで)


こう、と彼が俺の名前を呼ぶ。
激しく突き上げられて、息も絶え絶えに俺も彼の名前を呼ぶ。

酷いくらい暴力的な快楽に翻弄されて、意識が朦朧とする。

なのに虚ろな意識の中で、はっきりと聞き取れてしまった。

愛おしげに彼が呟いたのは、大切な人の名前。

「ユウ、ユウ…、愛しているよ」

俺も愛してるよ、聡一さん。



関係を始めてから半年が経った。

3ヶ月を過ぎた辺りから、ホテルではなく俺の部屋でやるようになった。
彼なら信用できるかもしれないと何の根拠もなく思ったから。


よくここまで持っていると思う。

ユウさんの話はあまり聞かなくなった。
最近彼はどこか辛そうに眉根を寄せている。

増えた回数。
悲しげな横顔。
あんなに幸せそうだったのに、何があったのか。

根本の原因は、俺だろう。
だけど、知らない振りをした。
俺がすべきことは彼の性欲を満たすことだけ。
それが俺の存在価値。
彼が囁く愛も、やさしい愛撫も、あたたかい口づけも、俺に大切な人を重ねているだけ。

そう思わないと、自分が自分でなくなってしまいそうで恐かった。
彼に縋り付いて、愛して欲しいと懇願してしまいそうだった。

そんなこと、許されるわけがないのに。



俺とのセックスで指輪を外すようになったのは、愛しい人への罪悪感から?
それならもう俺を買わなければいいのに。とは言えなかった。

そういえないくらい、彼を愛してしまったから。


ごめんなさい。




酷い罪悪感で、押しつぶされてしまいそうだった。



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あきゅろす。
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