悪天クライシス
まさに小悪魔?
「もぉお。カレンちゃんったらヒドいよねぇ。ルビエ達をほっぽって、イチビおにーちゃんと二人っきりで行っちゃうんだからぁ」
イアンとルビエは魔界宮殿内、ルビエの部屋で一火達を待っていた。
詫びる為に姿を現したカレン達に、ルビエはぷくっと頬を膨らます。
その行動はとても子供らしく可愛らしいものであったが、口から紡ぐ言葉にはトゲがある。
「す、すみません…その」
「まぁまぁ…落ち着きなよルビエ」
苦笑するイアンだが、心なしか昨日より顔色がいい気がする…と一火は思う。
「僕達だって色々好き勝手やってたでしょう?」
「そ、れ、は、べつばらだよぉ、べつばら」
「…意味違うと思うんだが」
「ちょっと待ってください。色々好き勝手って…何やってたんですか…?」
一火の呟きを遮り、カレンはルビエ達に問う。
途端、ルビエは顔を輝かせた。
「えぇ〜? なぁにカレンちゃん、カレンちゃん達がいない間ルビエ達が何してたか気になるのぉ?」
「はい気になります。とてつもなく」
焦らすように言うルビエに、しかしカレンは冷静に肯定を返す。
その様子が何だか不可解に思えた一火は首を傾げた。
「…? 別に二人が何やってたかなんて気にすることでも無いだろ」
「何言ってるんですかっ!」
カレンは一火の肩を突然がしりと掴み、ぐらぐらと揺らす。
「ちょ、おまえ、やめッ」
「……いいですかっ」
しばらく首が取れんばかりに揺らされた一火は、唐突に解放された。
カレンは本人が目の前にいるというのに、何故だか胸を張って大声で主張した。
「ルビエはですね、この魔界では結構…いやかなり顔が広いんです。
魔界に転生してまだ二年だっていうのに、ルビエは他の悪魔には一目置かれている存在なんですよ」
一火は話を聞きつつ、ルビエを一瞥した。
「えへへぇ、カレンちゃんってばー。ルビエ、そんなにほめられたら照れちゃうよぉ」
笑っている彼女の笑みは、無邪気な子供のそれと何ら変わりはない。
「…あんまり褒めてませんよ」
カレンはルビエの反応に小さく溜め息を零してから、話を続ける。
「この子は時折とんでもないことをしでかすんです。…イアンが男の人の血を飲めなくなったのだって、もとはと言えばルビエが原因みたいなんですよ」
それには流石に驚いて、一火は反射的にイアンを見る。
「…はは……」
「……」
…虚空を見つめている。象った笑みは儚い。
その反応は『肯定』を示しているとしか思えなかった。
少しカレンの話が現実味を帯びているように感じられてきた一火は、促すように彼女に視線を戻す。
「私が魔界に転生して来て、初めて目覚めた日……初対面のルビエは、イアンと一緒に私を歓迎してくれました。ここ魔界のことや、天界や冥界のことも、二人が教えてくれたんです。
…それは、いいんですけど」
歯切れが悪い。
一体何だと言うのか。カレンの声が沈んでいき、一火は微妙に怖くなってきた。
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