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悪天クライシス
問題ないわけない?


「――……」

寝ぼけ眼に映るのは、純白と言うに相応しい白、白、シロ。
目を覚ましてまず一番に視界に入る天井や家具はおろか、この部屋全てが白に染まっていた。
柱など一部の装飾には金なども使われているが、それにしたって真っ白だ。
…まぁ、それはこの部屋に限った事ではなく、天使や妖精その他が暮らしている『天界宮殿』全体に言える事であるのだが。

元人間の天使、一火はそれらに溜め息を吐きながら、未だに使い慣れないベッドから起き上がった。

――目を覚まして、真っ白な天井を見る度に、思うのだ。結局この光景は夢などではなく、現実だと。
まだ完全に納得出来たわけではない。いや、本当はもう解っている。でも心がその事実を受け入れたがらないのだ。

「ひィッ」

鏡の前に立ち、性懲りもなく自分の姿を見る。…自分の背中に生えているそれを見て、本日第一声を上げた。

「うげぇ…」

何だか目が冴えてきた気がする一火は、とりあえず寝癖が酷い前髪を適当に手櫛しながらやはり真っ白に染まった冷蔵庫を開ける。

取り出したのは、簡素なブロック型栄養食。他の選択肢もなくはないのだが…この後の事を考えると、あまり腹に溜まるものは避けたかった。

それを立ったまま、静かに咀嚼する。携帯食料といえども、天界のそれは人間界のカ●リーどうのより美味い、とチョコレート派の一火は思う。


『――明日は絶対、遅刻せずに来て下さいねっ!』

唐突に思い出したのは、別れ際のカレンの言葉だった。
彼女はあの後、何故かわざわざ二人きりになって、イアン達が教えてくれたより一時間も早い時間を指定してきた。有無言わさずと言った彼女の剣幕に、一火は勢いに呑まれたまま頷いてしまったのだが…。

「……っ」
彼女は何故、そんな事を言い出したのか。一体何のために。
その理由を考えていると、これまた不可解な事に一火は彼女のあの笑顔を思い出して一人百面相を繰り広げていた。

「あんな奴の考えている事なんかオレが解るわけないっ、だから今ここでオレが考えてもそれは時間に無駄になるっ! そうだろ!」

果たして彼は誰に同意を求めているのか。もしも誰かが彼の姿を見たら何かツッコんでくれただろうが、悲しいかな今は彼一人しかいないのだ。

一火はぶんぶんと首を振り、とにかく彼女の笑顔を頭の中から追い出そうと必死になる。
…これから、その彼女に会いに行くというのに。
こんな調子で大丈夫か? と自問自答する余裕すら、今の一火には無かった。


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あきゅろす。
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