短編/外伝集
進んでいるか、否か
他の人に聞いたら、ロックは今食堂にいるみたい。確かに、今の時間は午後の三時。ロックはこの時間はよくお菓子を食べに食堂に行っていたのを思い出した。
お菓子って言っても、わたしやみんなからすれば到底『お菓子』なんて軽いものじゃないんだけど……ロックは他の人よりもよく食べる、食いしん坊……かな。
「ロックはホント、よく食べるよなあ。見てて清々しいぐらいだよ」
「そうかな? 僕からしたら、皆よくお腹が空かないなって思うんだけど……」
「いや、うん。少しは腹減るけどさ。お前ほどじゃねぇよ……」
……いた。壁際の席で話しているロックとシングの姿を、わたし達は見つける。わたし達はちょうど、ロックの後ろにいる形になるかな。
よく見えないけど、食べた跡のある大きなお皿が、四枚ぐらいテーブルの上に重なってる。……ロックって、身体つきはシングやセイルよりもほっそりしてるのに、どうしてそんなにご飯が入るんだろう……。
それを見ていたシングは苦笑して、ちょっとだけロックから視線を外した……ら、わたし達がいるのに気が付いたみたい。少しいたずらっぽく笑って、こっちに合図するみたいにウィンクしてきた。
「……」
わたしとリピートは顔を見合わせて、頷き合う。そうっと、気づかれないようにロック達に近付いた。
「ところでロック、エリィとはどこまで行ったんだ?」
「ふぐッ!?」
「!?」
シングの言葉に、わたしはびっくりして。思わず声を上げそうになった。だけど、驚いたのはわたしだけじゃないみたい……。
「んんー……っ! …………、げほっ、げほ! ……ちょっとシング! いきなり何を……!」
ロックは喉を詰まらせたみたいでわたしは内心慌てたけど、水をいっぱい飲んで何とか大丈夫になったみたい。良かった……。
「いや? 別に? ただ単に、親友の恋愛がどこまで進んだんだろうなぁって気になったからだけど?」
「う……こういう時に親友って言うのは卑怯だよ……」
……シングはわたしがここにいるのを分かってて、ロックに話を振ったんだよね?
何でだろうって疑問に思ったけど、口には出さなかった。……ロックがなんて答えるのかって、気になったから。
ロックはしばらく『あー』とか『うー』とか唸ってたけど、
「……す、進んでは……ない……かも」
――そう、小さな声で言った。
「っていうのも、ぼ、僕が悪いんだけどね! なんていうかあの、こういうのはやっぱり男の方から何かこう……した方がいいとは思うんだけど! いざとなるとどうしたらいいのか分からなくて! それで言いたい事も言えなかったり……その……」
「わたしに言えないこと……あるの?」
「えっ!? ……え、エリィ! ちょっ……シング、まさか……!」
「さあ? なんの事かなー?」
思わず声を出しちゃったわたしに、ロックは気が付いたみたい。もの凄く慌てた様子で、シングに咎めるような声を上げた。
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