短編/外伝集
新鮮
「……できた! これ、どうですな?」
正面向きだとよく分からないから、わたしは立ち上がって、鏡に背を向けた状態で振り返ってみる。
「これは?」
「三つ編みですな」
「みつあみ……」
髪型を変えると、わたしがわたしじゃないみたい。こういうの、『新鮮』っていうのかな。
わたしはみつあみを自分の方にもってきて、まじまじと見つめる。こういう結び方もあるんだ……。
――その後も、リピートはわたしの髪を色んな形に結んでくれた。結び方も一緒に教えてくれたけど、それはもう少し練習が必要みたいで上手く出来なかった。
「エリィ、一番気に入った髪型はあるですな?」
そう聞かれた時、わたしは自然と、最初に教えられた『三つ編み』を口にしてた。わたしの答えに、リピートは「うん。リピートもそれが一番似合ってると思うですな!」と笑いかけてくれる。
「どうせだし、今日一日は三つ編みにして過ごすですな! エリィの可愛い姿、リピートだけで一人占めするのはもったいないですなー!」
「かわ……いい?」
「ですな」
リピートはよくそんな風に言ってくれるけど。わたしからしたら、リピートの明るい笑顔の方が可愛いと思う……。
「エリィ、自信を持つですな! 今のエリィの姿を見たら、普段はヘタレ全開で何も言えないロックだって、思わず可愛いって言うですなっ!」
「そ、そう……かな……」
ロックの名前を聞いた途端、わたしは何だか上手くしゃべれなくなっちゃった。元々そんな饒舌にしゃべる方じゃないんだけど、なんだろう……緊張してきた、っていうのかな。
胸の奥が、どきどきする。
そんなわたしの不安を見透かしたみたい。リピートは「大丈夫」って言ってくれる。
「よーし! それじゃあリピートも、今まで以上に気合いを入れるですな! さ、エリィ座るですなっ!」
「え、気合い……?」
……髪の毛を結ぶのに気合いっているのかな?
わたしは分からないままに、鏡の前に座った。
そうしてリピートが結び終えるまで、わたしはこれからのことを考える。……もっと言えば、ロックのことを。
――……ロック、『可愛い』……とか、言ってくれるかな……。
「ようし。これで完成ですな!」
リピートはそう言って、満足げにわたしに笑いかける。わたしの髪を三つ編みをして、最後に結び目に赤いリボンを付けてくれた。
「これ……」
「エリィの金髪に、赤色も似合うかなーと思ってつけてみたんですな。うんうん、リピートの目に間違いはなかったですな!」
「に、似合ってる……かな」
「似合ってるですな!」
わたしは鏡に映った自分を見てみる。……やっぱり、新鮮。目の前にいるわたしが、わたしじゃないみたいだった。
「それじゃあエリィ、さっそくロックに見せに行くですなー!」
「え……あ、リピート、そんな押さないで……」
緊張してるからか、無意識に足を止めようとするわたしだけど、リピートは構わずにぐいぐい後ろから押してきて。
結局、すぐに部屋から出た。
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