短編/外伝集
女の子らしい
「わたしも、髪を結んでみたいな」
リピートやイメリアはいつも髪の毛を結んでる。結び方は違うけど、どっちも似合ってるなってわたしは思ってた。
昼ご飯をチームのみんなで食べた後。今わたしは、リピートとセイルの部屋にいた。
隣のリピートがあったかいカーペットの上に足を投げ出して、わたしもおんなじようにしてる。
セイルは修練場に行ってるみたいで、今はいない。だからリピートは「女の子だけでゆっくり話が出来るですな!」って笑ってて。うんって言って、わたしも一緒に笑った。
「だったら、リピートが結んであげるですな!」
会話の中、ふとわたしが呟いた言葉にリピートは笑顔で返してくれる。すぐに髪留めを取ってきて、わたしに鏡の前に座ってと言ってきた。
「エリィ。こういう髪型にしたいーとか、希望はあるですな?」
「うーん……」
結んでみたいって言ったのはわたしなんだけど、正直どういう髪型にしたらいいかはよく分からない。
それをリピートに伝えたら、
「んー……じゃあ、色々試してみるですな?」
「うん」
その言葉に甘えることにして、わたしは頷いた。
「でもエリィ。前々から髪を結びたいって思ってたんなら、すぐに言ってくれればリピートはいつでもやったのに。どうして今まで言ってくれなかったんですなー?」
「……ううん。髪を結んでみたいって思ったのは、つい最近なの」
「あ、そうなんですな? じゃあ、どうして急にそんな風に思うようになったんですな?」
「……。なんでだろう? 実はよく分からないの」
「ふぅーむ……」
今のわたしの感覚を一番適切な言葉で表現するなら、多分『なんとなく』だと思う。
――そういえば、わたしは髪を結んだことがないな。結んでみたら、どんな感じになるんだろう。
なんとなく、そう思っただけなのかもしれない。
でも、リピートはそんな風には思っていないみたいだった。わたしの髪を櫛でとかしながら、しばらくうんうん考え込んでいた。
「――……でも、その『なんとなく』はいいことだと思うですな。女の子らしい欲求に感じるですな」
「女の子らしい?」
「ですな!」
女の子らしい……そんな風に見えるのかな。
わたしは女神イリスの肉体として創られたものだから、確かに身体のつくりは女性なんだけど。
欲求とか、そういう精神的なことはまだよく分からないところが多い。
「リピートは常々思ってたんですな。エリィは少なくとも初めて会った頃より、どんどん女の子らしくなってるですな!」
「リピートの目に間違いはないですな!」って言うリピートの顔は、本当に自信満々って風だった。
わたしはリピートと毎日一緒にお風呂に入ってて、その時色んな話をしてる。だから、わたしが何か変わってきてるなら多分すぐに気付けるって。
リピートの自信の源は、多分そこなんじゃないかと思う。
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