短編/外伝集
ある少女の告白
「ロック」
わたしは、ロックの名前を呼ぶのが好き。わたしにとって、これは始まりの名前でもあるから。
「ロック?」
ロックは、わたしに名前をくれた。何もわからなかったわたしに、優しく笑って。
からっぽだったわたしに、名前をつけてくれた。
「…ロック」
わたしのことを考えてくれた、道を示してくれた。何をしたいかを考えなくちゃ駄目だよって。
…その言葉、今なら少しだけわかる気がするの。
「ロック!」
わたしがわたしなのは、わたしがわたしとして生まれて来たから。ひとつの与えられた使命の為に、その為だけに生まれて来たから。
「…ねえ…」
わたしは自分の使命を無視出来ない。これからどうするにしろ、わたしは自分の使命に決着をつけなくちゃいけない。
「……ありがとう」
…わたしって、何なのかな? わたしは、何が『したい』のかな?
わたしは……。
「………ロック」
――黙っていちゃ、駄目かな。もう少しだけ、何も知らないふり、しちゃ…駄目かな。
…駄目だよね。してたいよ。駄目だよ。してたい。駄目。したい。
何も知らないふりをしたまま、生きたいよ。
大好きなロックに、ひどいこと、言いたくないよ。
「……ごめんね」
――…何も知らないまま、生きていたいよ。
End.
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