短編/外伝集
んで、結果は。
いやいや待て待て。今、彼は何と言った?
ススキ? ススキと言ったのか、彼は?
一転して混乱するイメリアに気付いた様子はなく、ロックは言葉を続ける。
「イメリアが人じゃなくてイネ科の仲間だったとしても、僕はイメリアのことを変な目で見ないよ。
だって僕にとってイメリアは、大事な友達のひとりだから!」
ロックはイメリアを元気付けるように力強く言い放ち。
「イメリアはススキでも、ずっと僕の友達だよ! だから大丈夫、安心して!」
輝くばかりの笑顔を浮かべて、ロックはグッと親指を立てた。
普段なら茶目っ気のあるポーズだ…と見惚れるくらいするのだが、当然今のイメリアにはそんな余裕ある筈が無く。
「あ…ああぁぁあああ゛ー……」
「え、あれ!? イメリアどうしたの大丈夫っ? あわわどうしようー…だ、誰かあーっ!!」
ふらふらと崩れ落ちたイメリアを支え、ロックは有らん限りに叫ぶ。
――…その後。勿論ちゃんとした告白が出来る筈もなく。
以後、ロックは二人きりになると「大丈夫だよ!」などと元気付けるような笑顔を向けてくるようになった。
それは進展していると、何も知らない人間ならそう思うかもしれない。確かに、二人だけの秘密と言えば聞こえがいいだろう。
だが、好きな人にイネ科のススキだと思われるのは、どう考えたって進展どころか到底後退である。
そうとしか、イメリアには考えられなかったのであった。
しかも偶然出会い、元気付けてくれた先輩による『学園の月桂樹の噂』が実は真っ赤な嘘だということすら、彼女は知らされていない…。
この年の七夕は、織姫と彦星の逢瀬を祝福するように快晴だったという――…。
おわり。
2013.7.7
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