element story ―天翔るキセキ― 似た者姉弟 「あれ、ベルおねえちゃん。それ、どうしたの?」 「へっ?!」 翌朝。 朝食を始めたカヤナ達は、思い思いに談笑もしくは黙々と食事を取っている。 ふとベリルに違和感を覚えて問いかけたのはカヤナの弟、ロウラ・ミナカだった。 ロウラに指摘されたベリルは素っ頓狂な声を上げて、慌てて取り繕うように言葉を重ねる。 「あ、あぁあの、これはね」 「オレとカヤナ、東ギルドのあるルーンに行って来たから。これはお土産だよ」 ごくごく平然と答えたオブシディアンに、ベリルは色々な意味で肩を落とした。 そんな彼女にこっそりと同情しつつ、カヤナは「ロウラにもあるわよ、お土産」と笑いかけた。 「ホント!? ありがとう、カヤおねえちゃん! オブにいちゃん!」 目を輝かせて喜ぶロウラを、一同(一部除く)は微笑ましく見やる。 ――ベリルが受け取ったのは、銀の細かな鎖に翠色の玉が付けられたペンダントだった。 カヤナから『この街で生産されているご当地物で、出来ればアクセサリーが良いだろう』などとアドバイスを受けて選んだ物らしい。 度重なる親友の気遣いが、あらゆる意味で心に痛み入る。 「チッ。朝っぱらからうるせぇなクソガキ」 空気を壊すは当然ながらアッシュで。彼の言い様に顔を歪めたのはカヤナ・ロウラ姉弟だった。 「うるさいのはどっちかしらね」 「ホントにアッシュってかわいそうな人だね。いちいち誰かの悪口言わなきゃ気が済まないんだからさ」 負けじと言い返すロウラの発言に、アッシュの眉間に皺が寄る。 「クソガキが粋がるんじゃねぇ。ったく、どういう教育したらんなクソガキになるんだろうなァ?」 「あら残念。貴方とは教育方針が違うみたいね。 この子は私の自慢の弟よ」 「へへ、ありがとカヤおねえちゃん」 アッシュの眉間にさらに皺が寄っていく。しかしこのまま会話を続けても無意味でしかないと思ったのか、舌打ちの後立ち上がり、そのまま立ち去って行く。 「べーっ、だ」 そんなアッシュの背中にロウラは舌を出す。 アッシュがいなくなってせいせいした、といった様子だ。 「本当にアッシュが嫌いなんだな、ロウラは」 一連の流れを静観していたタイガは、ロウラの様子に苦笑を零す。 「うん、きらい。だってカヤおねえちゃんやみんなのこと悪く言うんだもん!」 「も、もう。ロウラ、あんまりはっきり言ったらさすがに可哀相じゃない」 にぱっと無邪気に笑うロウラ。 そんな立派な?弟の姿に、カヤナは密かに嬉しそうだ。…口元が緩んでいる。 愛睦まじい似た者姉弟に、次第に笑みの空間が生まれていった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |