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element story ―天翔るキセキ―
自分にできること

ロック達はギルドに戻ると、すぐさまギルドマスターの居る執務室に向かった。
ヴァルトルの元に着き簡単な報告を済ませるなり、アリアはロックに再び説明を求めた。

ロックが全て包み隠さず話すと、ヴァルトルは神妙な顔で。
「そうか……そんな事があったのか……」
ツカツカ、と靴音を立ててロックに近付く。
普段はよく喋る養父が、無言で。
ロックはそんな養父に少し恐れを抱いた。

「ロック……」
「な、なに……養父さん」
本当に目の前に立ち、ヴァルトルは。


「テメェは馬鹿かッ!!」

しんとした部屋に響いたのは――ゴヅ、という鈍い音。

「イッダぁっ!! と、養父さんん……」
ロックはしゃがみ込み頭を抱える。…意識が一瞬飛んでしまう程の衝撃。
これは例えるなら天の神からの鉄槌……あながち間違ってもいないだろう。
なぜなら、自分は今――。

「誰にも告げず、一人で横穴に入ったァ!?んな無謀な事を誰がしろって言った!」
……養父に拳骨を貰ったのだから。

「ごっ、ごめんなさい養父さん。でも……僕は、これくらいしないと、みんなの役には……」

魔術師としての実力を身につけている仲間達と違い、自分は体内エレメントも少ない為に、魔術に関しては役に立たない。
それは仲間の足を引っ張り、また血が繋がっていないとは言え自分を息子にしてくれたヴァルトルの評判をも下げることになるだろう。
ロックにはそれが耐えられなかった。
彼が剣術を学んだのもその意志によるものだ。
仲間が持っていない力を得て、仲間達と同じラインに立ちたかった。ただその気持ちだけだった。
だから今回、海中を進まなければ入ることの出来ない横穴を見つけた時。
彼は『自分が役に立てる瞬間』に飛び込まざるを得なかったのだ。

「……はぁー」
わざとらしく溜め息を吐き、ヴァルトルは頭を乱暴にボリボリと掻いた。

「だとしても、だ。お前は勝手に単独行動を続けてチームの和を乱した。その自覚はあるな? ねぇっつったらブン殴るぞ」

「は、はい……もちろ、イダッ!」

「有るんだったらさっさと仲間に詫び入れやがれ!」

ヴァルトルはロックの頭を鷲掴みにし、無理矢理シング達の前に土下座をさせた。

「ご、ごめんなさいっ。僕、また勝手に突っ走って……」
「いーっていーって。もう過ぎたことだしな」

からからとシングが笑い声を上げた。

ロックが勝手な行動を取ったのは今回に限った事ではない。
しかし注意はしても強く咎めはしていない。
厳しい性格のアリアやセイルですらも、それは同じだった。

「だけどロック、気を付けてくれよー。無茶なんかしなくても、お前は充分にチームの力になってるんだからな」

だからあまり気に病むなと、そう言っているのだ。
それを察したロックは、「うん……ありがとう」と嬉しそうに笑った。


「寧ろ勝手な行動を取られる方が迷惑なのよ」

「お前にはお前にしか出来ない事がある。それで納得しろ」

「むずかしく考えないでいいですな! 大丈夫ですなっ!」

「うん、うん……みんな、ありがとう」

仲間達の温かい言葉に、ほんの少し涙ぐんだ。
シングは『ロックは泣き虫だな』と苦笑していたが、やがて話を切り替えるようにヴァルトルに話し掛ける。

「それで、ヴァルトルさん。エリィ……だったか。この子、どうします?」
「そうだな……」

客人用のソファーに寝かせているエリィを一瞥し、ヴァルトルは。

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