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element story ―天翔るキセキ―
何だかんだで合流


「ロックぅぅうううううっ!!! やっと見つけたですなぁああああ!!」
「ぅわあっ?! …り、リピート!」
食堂に着くや否や、後ろから強い衝撃。
まさかの不意打ちにロックはつんのめる。
ギリギリで顔面強打は免れたものの、寿命がかなり縮まったような気がする。

「リピートとエリィは、お風呂からあがってすぐにロックの部屋に行ったんですな。…そしたらなんと、ロックがいなかったですな! まさかエリィのことを放置して男二人珍道中してただなんて…リピートはショックですな!」
「……」
突然物凄い勢いでまくし立てるリピートに、セイルは頭が痛いとばかりに額を押さえた。
そして、お前が原因なんだから何とかしろとロックに視線を投げる。

「うぅ…ごめん…でも僕、部屋に置き手紙してたと思うんだけど…」
「ロック、修練場にいなかった」
リピートの後ろから進み出て、エリィは淡々と言う。
風呂上がりで火照った身体と、その無表情は何ともミスマッチに思えた。
「うっ」
…事実なだけに、ロックは何も反論出来ず。

「ご…ごめん…エリィ。リピートも」
「ですな!」
さも不機嫌と言わんばかりにリピートは鼻を鳴らす。
「…べつに、いい。ロックのこととか、いろいろリピートからきいたから」
「へっ!?」
エリィの予想外な言葉にロックは目を見開いた。
「…あと、セイルのことも」
「何だと?」
「あぁーっ!! それはダメですなエリィィィイイ!!」
エリィの発言はリピートも想定していなかったのか、かなり慌てた様子でエリィの口を塞ぐ。

「…? ふぁんで、くひ、ふひゃぐろ?」
口を塞がれても、エリィはリピートの意図を理解出来ていないのかもごもごと喋る。
「ロックについてはともかく、セイルのことはダメって言ったですなぁ!」
自分が墓穴を掘っていることに気付かないリピートに…。

「…ほう…? 俺の話なのに、俺に聞かれると不味い話なのか…」
「……う」
黒く重々しいオーラを感じる。
内心かなりビクビクしていながらも、リピートは勇気を出してロックの隣にいる人物に顔を向けてみる。
…一瞬だけ、目が合った。
「…ひ、ヒィィイイッ!」
すぐさま視線を外す。…あまりにも冷たい瞳で睨まれた。
(見なければ良かったっ! 怖い、怖すぎるですなぁ!!)
このままでは自分は捕って食われる!!

ロックやエリィのことは意識から外れ、その場にしゃがみこんだリピートは一人生命の危機を感じていた。
「…」
「ひぇぇえええ…」
大した距離ではないのに、セイルはゆっくりゆっくりリピートに近寄る。
…無言なのが怖すぎた。その身に纏った黒いオーラにはリピートだけではなく、ロックも怖くて手出しできない様子だ。

「おい」
「は、ハイ…ななな、なんですなっ?」
「お前、一体何を――」
突如頭に衝撃を感じ、セイルの言葉は途切れる。
「はいはい、ストップな」
後ろからセイルの頭にチョップをして止めに入ったシングが、やれやれと肩をすくめた。
後ろ…食堂側から出て来たという事は、ずっとこちらの騒ぎに気付いていたのだろうか。
そしていつまで経っても事態が収束する気配が無かったから、仕方なしに腰を上げたのか。

「お前らさ…未だに気付いてないのか?」
「「?」」
「後ろ」
呆れた様子のシングに促され、ロック達は揃って振り向く。

「………」
…食堂の入口で騒いでいた事を、すっかりと失念していた。
ロック達の後ろには、食堂に入りたくても入れない人で行列が出来ている。


「あぁあああ! ごめんなさいっ!!」

ロック達は、暫く食堂の入口脇で頭を下げ続ける事となった。
セイルやリピートが不満げで、待っていた人々がロックに対しては頭を下げないでくれと遠慮していたが、シングは全員に頭を下げさせた。

結局、五人が食事にありつけたのはそれから四十分後のことである…。





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