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element story ―天翔るキセキ―
どうか、友達に

「えっ、と…アリアはね、…うーん…」
何と言えばいいだろうか、今の状況は。
頭を抱えるロックに対し、セイルは平然と言い放つ。
「…お前には関係な」
「セイルっ!!」
「……」
ホント、勘弁してくれないだろうか…。またイメリアが怯えているし。

「は、話したくないこと、なら…すみませんっ! 聞かないです…」
「ううん、そんな事ないよ。同じ部屋で寝泊まりしてる人が不機嫌じゃ気になるのは当たり前だよ、うん」
慌ててフォローに回り、ロックは簡単に説明に入る。

「もう知ってる…かな。エリィのこと」
「あっ、は…はい。あの…ロック様の部屋に暫く住むことになった女の子…ですよ、ね…」
さっきリピートちゃんと歩いているのを見ました、イメリアは手遊びをしながら言った。
…心なしか声に元気が(さっき以上に)無いことにはロックは気付かない。
「うんそう、その子」と普通に話を続けた。

「アリアはエリィのことを怪しんでる…っていうか、警戒してるのかな。エリィのこと、信用しないって…そう言って」
それきり、自分達から離れてしまったと伝えた。
「そう…だったんですか」
イメリアは目を泳がせて、何を言えばいいのか分からないといった様子だ。

「イメリアには申し訳ないけど…今はアリアはそっとしておいた方がいいかもしれない」
ロックが助け舟を出すと、「そう…ですよね。…ごめんなさい」とイメリアは頭を下げた。

「気にしないで。これは僕らのチームの問題だし……あっ、でも…」
そこまで話して、ロックは明日のことを思い出す。
明日はシングやエリィと共にアリアに会いに行かなければならないのだから、同室であるイメリアに何かしら迷惑を掛けてしまうかもしれない。
それを伝えれば、「あ、……私のことは、何も…気にしないでください」となぜかイメリアは綻んだ。

「…むしろ私の方が…ロック様やシングくん達に、…ご迷惑を掛けないようにしないといけません…」
かと思えば、喋っている内にさっさと元の緊張した顔に逆戻りしてしまう。

「大丈夫だよ。僕もシングも、イメリアを迷惑になんて思わないし、勿論アリアも……エリィも、多分」
エリィに関しては確実にそうだとは言えないのが何とも…だが、ロックは正直に伝えた。
実際イメリアは良い子だと思っているし、シングやアリアもそうだろうと感じているからだ。

「はっ、はい…! ありがとう、ございます…」
顔を真っ赤にして、イメリアは再び頭を下げた。
思い切り下げた為に、彼女のポニーテールが生き物のように勢い良く動いた。
「あ、頭なんて下げなくていいよ! ……あ」
そうだ。
あることを思いついたロックは、イメリアに顔を上げて貰ってから。

「あの…イメリア。もし、もし良ければ、なんだけど…」
「はっ! はい! わわ私で良ければ!!」
沸騰しているのではないかと思うくらいに顔を真っ赤っかにして、声を上げるイメリア。
セイルはその様子に密かに溜息を吐く。
なんというか、ロックの言いたいことが読めただけに彼女の様子が哀れに感じられたのだ。

そしてセイルの予想通りにロックは告げる。
「その、…エリィと友達になってくれないかな」
あ、いや、無理になってって言ってるんじゃなくて…その。
普通に話をしてくれるだけでいいんだ。
今はリピートがお風呂に連れて行ってくれてるけど、やっぱり女の子で話せる人はもっといた方がいいと思うし。
アリアは今のところ、それを頼むのは無理そう…だし。

「イメリアぐらいしか頼める人がいないんだ。…ごめん。できれば、でいいし、イメリアが忙しい時とかは無理しないでいいから」
ロックの言葉の一つひとつに、イメリアはあからさまに元気を無くした。
肩を落とし、僅かに眉を寄せている。
(……)
セイルは、他人事だがさすがに哀れに感じた。口には出さなかったが。

「……。…わ、わかり…ました。私のできる限りで、……そうして…みます」
「…! ありがとう!」
にこにこと笑うロックには、悪気など全く無い。無いのだが。端から見ると……である。

嬉しそうなロックの様子に、イメリアは僅かに口元を崩して。
「…そ、それでは……失礼…しました」
と足早に去っていってしまった。

イメリアを見送り、その姿が完全に見えなくなると、セイルは大きな大きな溜息を吐いた。
「? どうしたのセイル」
「……ロック、お前…。……いや、何でも無い」
忘れろ。
そう言って、セイルはさっさと歩き出してしまう。
「え? 何っ、ちょっと…セイル! 待ってよー!」

慌てて追いかけるロックには、セイルの考えている事は勿論、イメリアの事も全く分からなかった。




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