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element story ―天翔るキセキ―
つまらない

ロックの話を聞いたエリィは、呟いた。
「…わたし、つまらない」
「え?」
思いも掛けないエリィの言葉に、ロックは間の抜けた声をだしてしまう。
しかしエリィは至って真面目に言っているようだ。僅かに眉を顰めている。
「…だって、『ともだち』がいないひとは…つまらないんでしょ?」
わたし、ともだちなんていないもん。

エリィの言っている事を理解したロックは慌てて。
「えっ、あ! ち…違うよエリィ。僕の場合と君の場合じゃ、色々とその、違いが…」
「ちがいって、なに?」
「え…と、その…」
とりあえず違うとは言ったものの、エリィの更なる問いに答えられずロックは焦る。
「…やっぱり、わたし、つまらないんだ」
いつまでも答えないロック。エリィの声のトーンが少し落ちた気がした。

「エリィ…」
気まずい空気が流れる。やがてエリィは俯いてしまう。
(どうしよう…)
困り果てて、ロックは頬を掻いた。



「えーりぃ!」
その時。部屋の扉が勢い良く開け放たれる。
「?!リピート!」
ノックも無しに入って来たのはリピートだった。
「エリィ、リピートと一緒にお風呂入るですなっ」
「おふろ…?」
「すっきりサッパリ、すっごく気持ち良いですな!」
「…あ。そうだよエリィ、行っておいでよ」
ギルドの風呂は男湯女湯で分かれている。
流石に風呂にまで一緒に入る訳には行かないし、リピートの申し出はありがたかった。

「エリィ、女の子はキレイにしといたほーがいいんですな」
「…そうなの?」
「ですな!」
暫く考えている素振りを見せたエリィだったが、やがてハッキリと頷いて。
「…じゃあ、わたし、リピートとおふろはいる」
「やったぁですなー! 早速行くですな、エリィ!」
よほど嬉しかったのか、リピートは飛び上がり喜びを表現する。
「…うん。 …ロック、行ってくる」
「うん。行ってらっしゃい。リピート、エリィをよろしくね」
「アイアイサーですな!」
リピートはエリィの手を取り、風のように去っていった。
結果、ロックは一人になる。

「ひとりか…」
呟く。思っていた以上に小さな声は、あっという間に空気に溶けてしまった。
(……エリィには、置き手紙しておけば…いいかな)
やはり自分の部屋で一人で居るのは好きではない。心の中がざらつくような感覚に囚われる。
エリィに対する罪悪感を秘めつつ、ロックは暫く部屋を出る事にした。

目的地は…修練場だ。



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