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element story ―天翔るキセキ―
残りの1人



とりあえず部屋に帰ろうと五人で広々とした回廊を歩く。
談笑しつつ、途中で何人もの人と擦れ違い挨拶を交わすも、相手はやはりエリィにばかり視線を向けていた。
「ねぇ…あの子供が…」
「信じられない…けど…」
「…ロック様が…」
さらに集団でひそひそと話し込んでいる人間もおり、そこからはエリィの話も自分の名前も聞こえて来た為、ロックは密かに辟易していた。

「しっかし、休暇かー。こりゃあ思わぬ時間が出来たな。どうすっか」
シングは道すがら声を上げた。大袈裟な程その声は大きかった。
「…そうだね」
内心感謝しつつ、しかし上手く言葉を返せず申し訳ない気持ちになる。
すると、それまで黙っていたセイルが言葉を紡ぐ。
「…せっかく集魔導祭まで時間があるんだ。やる事は決まっているだろう」
「わぁってる。『鍛錬に励め』だろ?そりゃそうなんだけどさ、ここは新しく加わったエリィの為にもひとつ、パーッと騒ごーぜ!」
「お前は遊びたいだけだろ」
「まぁな!」
はぁ、とわざとらしく溜め息を吐くセイルに悪びれる様子もなく、シングは満面の笑みで返した。
ロックやリピートはというと、この二人がこういった会話を繰り広げるのは今に始まった事ではないので静観していた。

「んでも、パーッ!と騒ぐのはリピートも賛成ですな! エリィ、一緒に遊ぶですなっ」
「あそぶ…? …なに?」
「たとえば〜…札遊びですな!あとエレメントおはじき、あと」
リピートが楽しそうに指折りしていくのを、エリィは目を瞬かせる。
興味津々に聞いている(ように見える)その姿に、ロックは人知れず笑みを零した。

「仕方のない奴らだな…俺が付き合うのは1日だけだ。他は全て鍛錬に充てるからな」
此処で自分が抜けると言えば、もはや決定事項のようにはしゃぐリピートに罪悪感が芽生えるとでも思ったのか。
セイルは溜め息混じりに承諾した。
「セイル、めずらしくノリがいいですな!」
「…お前な」
…リピートはセイルの真意に全く気付いていないようだが。

「うっし、じゃあそうだな…準備期間は今日明日ってとこか」
顎に手を当て、思案するシング。
「…準備期間?」
「準備ってのは大切だからな。遊びに限らずそうだろ?任務に向かう前の打ち合わせだって立派な準備じゃんか」
さも当然のように言葉を連ねるシングに、セイルは目を細める。
「…そういう言い方をすれば正論のように聞こえるがな」
「かといって異論も無いだろ?」
「……」
無言を肯定と受け取り、シングは満足げに頷き、宣言する。

「決まりだな。二日後、六人で盛り上がろうぜ!」
六人。この場に居るのは五人。
エリィもそれに気付き、全員の人数を数えて首を傾げている。
…ロック達は何を言わなくとも解る。シングはアリアを混ぜたのだ。
「アリアは厄介だぞ」
すかさずセイルが言葉を放つ。
「…今までも、あんまり付き合ってくれたこと無かったもんね」
ロックもセイルに続く。
元々アリアは、自分の知る限り誰かと一緒に遊ぶなどとは一番かけ離れた人だとロックは感じていた。
しかも今回はそう言った元の性格に加えてエリィの件が尾を引く。
先程のアリアは警戒心を露わにしていた。あの状態ではまずエリィを連れて会う事も難しいのではないだろうか。

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あきゅろす。
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