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element story ―天翔るキセキ―
求めていた筈の再会


「――そこまでだ!」

「!!」

男と争っていたランジェルは、遥か後方から聞こえてきたその声に、思わず反応した。通常時の彼であれば、目の前に戦う相手がいる状態で余所見などは絶対にしない。だが、今回に限っては『例外』が起きた。それはその声の主が、自分がずっと再会を望んでいた人間だったからだ。

「余所見してんじゃねぇよ!!」

「! しまっ……」

わずかに気が緩んだ隙に、ランジェルは剣を弾かれる。そしてそのまま、男が自らの剣を振り上げるのを視界に捉えた。次の瞬間に訪れるだろう苦痛を覚悟したその時、


「アッシュ!!」

「ッ!!」

別の人物の鋭い声が上がり、男――アッシュはそれに強い反応を示した。目を見開き、歯を食いしばりながら、果たして何を思ったのか。ランジェルを切り裂こうとしていた剣は、彼の眼前……ギリギリの所で剣を止めていた。


戦いが終着すると、ランジェル達の戦闘に口を挟んだ二人を含めた計五人が、一様に舞台まで歩いてくる。

「タイガ様……!」

ランジェルは、敬愛するかつての上司を見た。二年振りの再会、しかし待ち望んでいた筈のそれは、『タイガが自分達を裏切っている』という紛れもない真実を、まざまざと思い知らされる結果となった。

「……! レスマーナ様っ!」

自分を援護する為、廊下の方へ控えていた彼女が倒れているのを、ランジェル始めロック達も目にする。
彼女がいるのは、タイガ達が通ってきた道。ここに入る為のゲートは全て閉められていた筈なのに、なぜ彼らがここまでやってくる事が出来たのか。その答えはつまり、ランジェルとレスマーナがここに来る為に使ったゲートキーを、タイガ達が彼女を襲い奪ったという事なのだろう。


「……タイガ様、貴方は仲間に……?」

「……ああ」

「……!!」

ランジェルは抗えない現実に打ちのめされる。自分の仲間を、友人を、何よりタイガが大切にしていた事をランジェルはよく知っていた。そんな彼が、仲間を傷つけただなんて。信じたく、なかった。

「父さん達は……!?」

「……ロック」

エリィを抱いたまま、ロックはタイガに向かって叫ぶ。タイガはロックを一瞥すると、痛ましい表情で視線を逸らした。

「タイガさん……っ」

その顔を見てしまえば、真実は明らかだった。ヴァルトル達はタイガと相対し、そして敗れたのだと。

「……あの人達は……だいじょうぶ、です。命に、別状はありません……」

「! エル! カヤナさんも……どうして!?」

「……」

「……ごめんなさい……」

タイガやリーブの後ろに隠れていたエルは、泣きそうな顔でそれだけ言い、彼女の隣にいるカヤナは無言であった。二人に共通しているのは、ロックやエリィから視線を外した事だ。

「まあまあ、エルが謝る事ないって」

この場に似合わない、にこにことした笑顔を浮かべている青年はオブシディアンである。

「ロック君達とは……あー、会うのは三回目だったっけ? ごめんね、最初に会った時に言ったのは偽名なんだよ。本名は多分、もう知ってるんじゃないかな」

「? ……まさか……!」

その口調と、印象的な笑顔。そして彼が身に纏っているのは断罪者の制服。ロックはそれを鑑みて、以前街で出会ったシディアンという青年と、今ここにいる彼が繋がった。二年前、響界を抜けた断罪者の男――それが彼だという事に気が付く。



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