element story ―天翔るキセキ―
その答えは
「これから、わたしが言うこと……覚えておいて欲しいの」
その声が、やけに儚い響きをロックの耳に残して。先程とはまた違う、言いようのないにじり寄るような不安を感じさせた。
「女神イリスを傷つけることが出来るのは、虹色のエレメントの力だけ」
「……」
「ロックのお父さん達が持っている武器なら、女神と互角に戦えるはず……。でも、それの力を完全に引き出せるのは、きっとロック……あなただけ」
「……どうして……?」
「それは……虹色のエレメントの力を扱うのは、同じように虹色のエレメントを持つ存在じゃないと駄目だから」
「だったら……エリィだってそうじゃないか。僕だけじゃない……でしょう?」
「……ねえ」と、ロックは言葉を続ける。今までのエリィの言動に、どう考えてもおかしい部分があったからだ。それを追究せずにはいられなかった。
「……さっきから、女神が復活する前提で話をしているのは……なぜ……?」
――……まさか、と嫌な予感が頭を駆け巡る。
決意を秘めた瞳を宿して、わざわざ自分以外には聞こえないようにして。それで伝えてくるのは、女神が復活した後の対策のようなもので。
なぜ、そんな事をするのか。しなければならないのか。考えれば考えるほど、その可能性はどんどん絞られていく。
「エリィ、答えてよ……。理由も何も言ってくれなかったら、僕は納得出来ないよ……?」
「……」
エリィの吐息が耳にかかる。考えているような間を置いて、エリィは再び言の葉を紡ぐ。
「……魂の人形はきっと、わたしやフェアトラークだけじゃなくて、ロックも女神イリスの復活の糧にしようとしてる。
――わたし、ね。ずっとそれを考えてたの」
……今まで誰にも話して来なかった、エリィの想いがそこにはあった。
「ロックが連れて行かれないようにするには、どうしたらいいのか。わたしはずっと考えてた。でも、答えは出なくて。……そうこうしている内に、今日になって」
「……」
「ロックが控え室に行った後、わたしはエルと一緒に観客席を出たの。そうしたら突然、エルがいなくなって。ひとりで捜していたら……」
突然、あの男がどこからともなく現れて。襲われてしまったのだと、エリィはいきさつを話した。
「その時、わたしは戦おうとした。でも、前までみたいに念じただけじゃ魔術は発動できない。……結局、紡ぎ歌を唱える間も与えては貰えなかった。
――あの人はわたしのことを、すごく冷たい目で見て……言ったの。『人形がこんな役立たずで大丈夫なのか、使い物になるのか』って」
その発言が、エリィの心にどんな意味を残したのか。それを聞き逃さないように、ロックは耳を澄ました。
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