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element story ―天翔るキセキ―
強い響きを


――その時、ロックの連結魔道具が反応する。縋るように手に取れば、相手はヴァルトルだった。


『ロック、聞こえるか?』

「父さん……! い、今、どうなってるの!?」

『落ち着け! 俺達も切羽詰まってるから手短に話すぞ。……今、響界には多くの魔物達がはびこっている。理由や原理は分からねぇが、『何もない所から突然現れた』んだ』

「……!? じゃ、じゃあっ!」

『ああ。今は無事のようだが、いつそっちにも魔物が現れるかもしれねえ。だから今、レスナとランジェルが向かっている。それまでは何とか耐えろ!』

ロックに注意してはいるが、ヴァルトルの声には焦りが満ちていた。
だが、それも仕方がないだろう。魔物が何もない所から現れるなど、今までに無い事象が起きているのだから。


『ナイクが言うに、『ここに現れた魔物は通常の魔物とは違う』。……襲う相手を選んでいるような動きを取るんだ!

俺達ギルドマスターのように特殊な武器を持つ人間や、お前とエリィのような特異な者のみが狙われている可能性が高いらしい!』

「……!」

ヴァルトルの言葉に、ロックは全てを察した。

特殊な武器とは、『神の与えし叡智の欠片』。これらは自分やエリィのように、元を正せば虹色のエレメントロックから生まれた存在だ。

――他に特異な存在といえば……フェアトラークだ。リーブ達が、いや、魂の人形が欲しているもの。


つまり――……。


「ここにいる魔物は、魂の人形が生み出したもの……!」

ロックの結論は、どうやらヴァルトル達と同じだったらしい。ヴァルトルは『そう考えるのが一番単純だ』と返して来る。

『あいつらは確実に、エリィとフェアトラークの回収を狙っている筈だ。エリィは、そこにいるんだよな?』

「……ッ」

『おい、ロック? どうした!?』

「いない……いないんだよ! エリィが、どこにもっ!!」

「何だと!?」

ロックの答えに、ヴァルトルは驚愕の声を上げる。そしてその瞬間、


「――……ッ!!?」

『!? ロック!!』

誰もが予想だにしていなかった事が、またしても起こってしまった。

耳をつんざくような破砕音が、すぐ近く――ロックのいる南側の通路の方から聞こえた。すぐさまそちらを見れば、そこには今までの見る影もない、細かな瓦礫が散らばっている。幸いにも上に設置された客席は無事であったが、通路は瓦礫に埋めつくされ、かなり無残な状態だ。

「げほ、ごほっ!」

『!? ロック、大丈夫か!?』

「う、うん……だい、じょうぶ……」

砂埃が大きく舞い上がり、近くにいたロックは大きく咳き込む。連結魔道具の設計上、音声を聞く事しかできないヴァルトルの声に答えながら、ロックは目を細める。


――砂埃の中……なにかが、そこにいた。


(いや、違う。なにか……じゃない。……人? 人が、倒れてる?)


ロックは、再び胸の鼓動が痛い位に騒ぎ出すのを感じていた。そこに倒れている誰かに、見覚えがあると思ったからか。それが誰なのかすぐに分かったのに、信じたくないと無意識に感じたからなのか。ロック自身にも分からなかった。

(響きを、感じる……!)

今まで以上に、強く。すぐ傍にいる、『彼女』を示すように。


「――エリィ!」

ロックはようやく駆け出した。連結魔道具を落とした事にも気付かず、ただひたすらに。背中から血を流し、ぴくりとも動かないエリィの元へと向かって。




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