element story ―天翔るキセキ―
どうかしている
「な……!? こんなのってアリなんですなっ? ロックは剣を使ってるからハンデあるのに、コルトは剣を使ってハンデなしだなんて不公平ですな!」
「いいえ、問題はないわ」
「よく考えろ」
コルトが剣を使った事に対し、リピートは思わず非難の声を上げた。しかし両隣のセイルとアリアから同時に言い返され、むうと口を尖らせる。
「まぁまぁ、そう拗ねるなよ」
「うー……だってだってっ」
シングに宥められても、リピートは納得出来ない。すると、予想だにしない方向から答えがやってきた。
「――……戦闘に使われる魔道具の種類は、煙幕玉などの補助用と、剣や紋章十字などの武器用の二つ。ギルドメンバー同士の試合でハンデを負うのは、武器用を日常的に扱っている人間のみ。
加えて、それぞれが試合用に持ち込む魔道具は、補助用と武器用の全てから選べる。……とくれば、彼は何も反則などしていない……という事になるわね」
場を収めたのは、今まで黙って試合を見ていたカヤナであった。出会って間もないとはいえ、ここまで饒舌にしゃべる彼女を初めて見たシング達は、少しぽかんと間の抜けた表情で彼女を凝視する。
「……! いっ、いえ、ごほん! ……友達が、魔道具に詳しくてね。それを思い出しただけよ」
その視線に気が付いたカヤナははっとした顔になり、わざとらしく咳払いをした。そして居心地悪そうに周囲を見回しながら、
「エル達、遅いわね。私、捜してくるわ」
そう言い、シング達が何も言う間もなく、早足で立ち去ってしまった。
「……どうかしているわね」
カヤナは誰にも聞こえない声で呟く。何でわざわざ口を開いてしまったのだろうか。彼らと会話する理由など、何ひとつ無いというのに。
――きっと、緊張しているのだ。自分達の行動が、これからの世界になにを齎すのか。目的として掲げているものが、本当に実現するのか、を。
『――わたし、応援してるから。頑張ってね、ロック』
ふいに思い出したのは、人形の片割れの声。その声は、自分が知る人形とは遠くかけ離れた、人間味のあるもので。あのやり取りだけを見たら、あの人形もあの少年も、人ならざるモノには……全く思えなかった。
(……いえ)
疑念を消し去るように、カヤナは首を大きく振った。
こんな時に迷っている場合ではない。自分はただ、自分のやるべき事に思いを馳せていればいいのだ。
(そうですよね……リーブ様)
大切な人を想いながら、カヤナは連結魔道具を手にした。
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