element story ―天翔るキセキ― もしかして? 「! ――もしかして…」 「……はい」 昔の事を思い出していたロックは、考えられるひとつの可能性を見出した。そして、イメリアはそれを肯定するように淀みなく頷く。 「その『お兄ちゃん』は……コルトのことなんです」 「……やっぱり…」 ロックは、ひどく悲しくなった。イメリアはあんなにコルトの事が好きだったのに、またコルトだってきっとその筈なのに。なぜ今、こんな風に擦れ違ってしまっているのだろうか。 『――だからこそ、お前に腹が立って仕方ねぇんだよ』 (っ……) コルトの言葉が、胸に刺さる。 この二人の擦れ違いの原因が自分だと、コルトはそう言いたいのか? なぜ、どうして―― 「……イメリア」 「…はい」 聞かなければ。イメリアがこのタイミングで、わざわざ昔の話を持ち出してきたのにはきっと理由がある。 知らず知らずの内に、自分は彼ら二人の間に罅が入るような事をしたのだ。――きっと、恐らくは。 ロックはそう結論付けて、再びイメリアを見据える。今度はちゃんと視線が合った。 ――…気が付けば、イメリアの表情もどこか……覚悟を決めたように。気弱な彼女が、初めて見せるような表情をしていた。 「……。まず、初めに言っておきます。…ロック様は、『何も悪くありません』」 「――…え?」 自分が考えていた事と真逆の、あまりに予想外な言葉に、ロックは思わず瞠目した。 ――そして。イメリアは朱を頬に集めながらも、しっかりとロックを見据えて。いつもは伏し目がちな視線を、かっちりと合わせて。 イメリアは、ロックに告げた。 「…わ、わた、し……私は、イメリアはっ、 ――…ロック…さんのことが……」 「……あ、ロック。おかえり」 「…………あ! え、エリィ、みんな。う、ウン。タダイマ!」 「…………」 ――…ロックとエリィ以外の四人が、無言で顔を見合わせる。その表情には、ただひとつの言葉が刻まれていた。 『コイツ、何か別の爆弾抱えて戻ってきやがった!』――と。 「……なぁなぁ。オレの勘違いかもなんだけどさ、イメリアのやつ、もしかしたらもしかしちゃったんじゃね?」 「あ、あの子にそんな度胸があるとは思えないんだけど。…しかもこんな時に、突然?」 「でもでもっ、かなりの鈍感さんのロックがあんな風になるなんて……やっぱりそういうことなんじゃないですなっ?!」 「あいつは直接的な事を言わないと全く理解しないからな……やはり今まで気が付いていなかったのか…」 四人が顔を突き合わせて会議している中、ひとり状況を全く理解していないエリィがロックに話しかける。 「ロック。何かあったの?」 「えぇっ?! いや、え、ウン? なにがっ!?」 「だって、顔が真っ赤だから」 「あ、いやその。な、なんでもないよ! そ、そうだ。ここまで走ってきたからさ! ちょっと疲れちゃってね! うんっ!」 「……?」 エリィの目から見ても、明らかにロックの様子は不自然だった。が、理由が全く分からない為、それ以上追究する言葉も出て来なかった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |