[携帯モード] [URL送信]

element story ―天翔るキセキ―
むっとした

ロックは、魔導機のうなじ下にある機能停止用スイッチを押した。すると、魔導機は緩やかに動きを失い。数秒の後に動かなくなった。


「……ふう…」

魔導機が完全に機能停止した事を確認して、ロックは息を吐いた。そしてゆっくりと床に座り込む。


――…今回の集魔導祭。それが例年よりも発表から開催までの期間が一週間と短い理由も、一般人の被害を最小限に抑えようとした結果であった。

敵を誘い出す為には一般人をも響界へ引き込むしかなく、しかしそうすれば敵との戦闘になった際に一般人が巻き込まれる。


それを防ぐ為に、最終的に執られた対策が――…集魔導祭自体のシステムを変えてしまう事だったのだ。


例年では、ギルドの人間全員が大人子供関係なく参加し、無所属の魔術師と共に力を競い合うのが集魔導祭であった。

が、今回はそうではなく――…『実力のある大人は響界全体の警備にあたり、未熟な子供達のみを集魔導祭に参加させる』という体制を執る事とした。

『若者の実力を測り、ギルドの人間としての自覚と成長を促す』という、もっともらしい理由をつけて。

大人達は一般人に勘ぐられないようにしながら、一部はもっとも一般人に近い観客席で、また一部はその周辺の警備などにあたる。
この作戦を実行するために、東西南北すべてのギルドメンバーに協力を仰いだのだ。



ロックは暫く身体を休めつつぼうっとしていたが、ふと何ともなしに時計に目を向ける。すると、間もなく修練場の使用時間である二時間が経つではないか。

「…あっ! まずい…早く片付けなくちゃ」

流れ落ちる涙を拭い、慌ててロックは立ち上がる。鈍い疲労が身体全体に溜まっており、床を踏みしめる足もずっしりと重くなっていたが仕方がない。自分の次にここを使う人間がいるだろうし、早く部屋を明け渡さなければ。



「……あっ」
「……」

部屋を出た時、ロックは目の前にいた人物に思わず目を見開いた。次にこの修練場を利用するのだと思われるその人物は、あからさまにロックを睨み付けて。

「……さっさと退けよ」

苛立ちを隠す素振りもなく、そう言い放った。

「…あ、うん。ごめん……コルトが次だったんだね」

特に何てことはない言葉のつもりだったのだが、その発言はどうやら相手――コルトは気に入らなかったらしい。扉に掛けていた手を止めて、突然声を上げた。

「悪かったな!! どうせ俺はギルドマスターの息子様の後にしか行けねえよッ!」

「!? こ、コルト…? ぼ、僕、何か変な事言った?」

「ああ、そうだな! そう思ってれば良い! お前なんかに俺の気持ちなんざ絶対に分かる筈がねぇからなっ!!」

訳も分からないままに怒鳴りつけられ、ロックは反射的にびくりとする。けれど、同時に少しむっとした。これは八つ当たりではないだろうか?



[*前へ][次へ#]

10/46ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!