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element story ―天翔るキセキ―
父と息子

「今まで、俺達は分からない事だらけだった。だが、今はそれが段々と解明されていってるんだ。

……正直に言って、この状況を招いたのは俺達ギルドマスターや響界代表にもある。フェアトラークの在処について記されていた書物の意味を、正しく理解しようとしていなかったからだ」

書物に書かれた事が何を意味するのか、ヴァルトル達は理解しようとしていなかった。それがロックや虹色のエレメントロックに関係する事にも、まさかと思いながら放置していたのだ。

ヴァルトルは正直に、自分達上の人間の過失を詫びる。そしてその上で尚、ギルドメンバーらに協力を仰いだ。


「俺にとって、ロックは家族だ。俺がロックの事を信用するのはそれが一番の理由だと思っている人間はここにもいるだろう。……ああ、そうだ。『甘い』と言われても、俺には『そうだな』としか返しようがない」

次第にヴァルトルの声が熱を帯びていく。それこそまさに、かつての仲間から『裏表のない人間』だと言われた、彼の心からの言葉に他ならない。


「こんな言い方は卑怯だと、そうなじられても構わねぇ。全てが終わったら、その愚痴はいくらでも聞いてやる。その上で、俺はお前達に言う。

――もし、女神イリスが復活した場合。リーブ達が何を目的としているのかは未だに分からねぇが、よく考えてみろ。要は『自分が気に入らない世界になってたら、全部壊してやる』っつってんだ。

…そんなの、身勝手にも程があんだろ」


もはやそれは理論的な説得ではなく、ヴァルトル個人の感情論でしかない。

――…けれど、咎める人物は誰もいなかった。


「気に入らねぇもんは壊すなんて理屈、神様だからって俺は絶対に受け入れたくねぇ。人間の事をハナから下に見てんだ。舐められてんだよ!

――…もし、女神が復活した場合。俺達人間が女神にとって都合の悪いものと判断されたら。

そうしたら、お前らにとっての家族や仲間はどうなると思う?」


――……気が付けば、場は収束していた。ヴァルトルの言葉を皆が一人ひとり真摯に受け止め、その意味を考えていたからだ。


「それをよく考えてみてくれ。そして、それでも駄目だ、ついていけねぇって思ったんなら俺はもう何も言わねえよ。勿論、咎める事もしねぇ。

――…時間をやる。考えてみろ」



――そうして、ギルドの人間達が出した結論はひとつだった。

それは、『自分の大切なものを守る為に、戦う』という、単純明快なものだった。

ひとりがそうしようとヴァルトルに応えれば、そうだそれがいいと乗る人間もいた。さっきとは逆に、いい方向での波紋が広がっていたのだ。


だんだんと活気づく人々を見つめ――次にヴァルトルに視線を移し、ロックは思う。

(……ありがとう、父さん)

父が『ロックとは家族だから』と、ギルドの人間がいる今ここで言ってくれた事が嬉しかった。
自分が魔術師として未熟だとされてきた今まで、『あんな未熟な者をギルドの魔術師に据えるのは自分の養子だからだ』とヴァルトルは陰で言われてきたのを知っていたから。そして恐らくは本人の耳にもそれは入っていただろうに。

今回はそれ以上に、陰で何を言われるかも分からないような状況なのに。その可能性を投げ打って説得してくれたのが嬉しかったのだ。


(……僕も、自分に出来る事をしなくちゃ。父さんの息子だって、胸を張って言えるように)

やるべき事が沢山ある。集魔導祭までの一週間の予定を頭の中で組み立てながら、ロックは自分を奮い立たせていた。



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あきゅろす。
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