element story ―天翔るキセキ―
リーダーの素質
「やっぱり、俺はリーダーに向いてねぇなあ」
雑談の最中、突然そんな言葉を漏らしたのはヴァルトルだった。彼がこのチームのリーダーとなったのは東ギルドマスターの意向ではあるが、ヴァルトルはその判断にあまり納得が行っていないらしい。
頬杖をつき、タイガとナイクに顔を向ける。
「今回もそうだったけど、基本的に作戦はいつもタイガやナイクに任せっきりだしさ。俺、考えんの苦手だし」
「別にいいじゃない、適材適所って事で。私達は何も気にしていないわよ。ねえ?」
「ああ。お前は十分チームリーダーをやれてるよ。少なくとも、俺よりはよっぽど向いてると思う」
「そうかあ?」
無言でいるのは結局数分も保たなかったヘリオドールが、タイガに異を唱える。
「ヴァルトルが悪いってんじゃないけどさ、やっぱリーダーってもんはメンバーに指示を出す立場だろ? 場の状況やチーム全体の状態を冷静に把握してさ。
となれば、ナイクやタイガの方が適任だとオレも思うぞ」
「そういう事。俺もずっと、それが気にかかってるんだよ。特にタイガは俺らより年上だし」
「…年齢は関係あるのか?」
確かに、タイガはヴァルトル達よりも二つ年上だが。タイガ自身からすれば、それは特に考慮すべき点には感じられなかった。
しかし、ヴァルトルにとっては逆のようで。訝しげなタイガへ、彼はその根拠を話し出す。
「いや、だってほら。俺達の先輩だって、よく言ってるだろ。『お前達は子供だから、俺達は大人だからー』って」
「その理屈で言えば、俺もお前達と変わらない子供な訳だが」
「あー、いや、そうだけどさ。何ていうかなぁー…」
「確かに先輩達から見ればおんなじだけど、わたし達の中だけではたっくんが一番大人だよねって、そういうこと?」
「おぉ、そうだそうだそういう事! レスナ、ナイス!」
「えっへへー」
「いや、それぐらいの事はオレにだって見当はつく……いや何でもない」
嬉しそうに笑うレスマーナに、ヘリオドールは思わずツッコミを入れた。が、またこれを切っ掛けに自分を弄る方向には行きたくないと考えたのか、最後はぼそりと呟いていた。
「……そういうものだとは、俺には思えないんだが」
躊躇いがちにタイガは口を開く。頭の中で考えを整理しながら、自分の考えをヴァルトル達に話し始めた。
「確かに、俺はお前達よりも年上だが。それとリーダーの素質には全く関係無いと思う。
先輩達が言いたいのは、あくまでも俺達の先輩として。若輩者の俺達よりも長くギルドにいた人間としての、助言だと思うんだが」
年齢が上だから先輩なのではなく、自分達より長くギルドにいたから先輩なのだ。だからその点はリーダーの素質として考慮すべき所ではないと、タイガがまずそれを否定した。
「……俺はやはり、お前の方がリーダーに向いていると感じる」
そして、次に話したのはもうひとつ。根本の事だ。
タイガはなぜ、自分よりヴァルトルの方がチームリーダーに向いていると思うのか。その理由は。
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