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element story ―天翔るキセキ―
全て、を


「結論から言うとだ。……リーブ、お前にはある容疑がかかっている。ギルドに潜伏し、情報を外部に流す内通者として、だ」

「……」

東ギルドにあったとある書物が盗まれた際も、逃げ去った偽物の断罪者と最後まで共にいたのはリーブだ。そして、断罪者の仮面や制服はそう偽造出来るものではない。
ヴァルトルがアッシュによって重傷を負わされたのとほぼ同時刻に現れた断罪者は、かつて響界に所属していたオブシディアンではないか。ヴァルトルはそうリーブに語った。


――…つまり、全てが繋がっていると言うのだ。現在行方不明である人間の中で、何かしら大きな出来事を起こした人間と、リーブが。


……そして。


「あの男…アッシュが響界に襲撃した時、秘密指定書庫の封印は破られた。あれは本来、代表とギルドマスターにしか解除する事は出来ない。

……だが、あの時は俺達は全員会議室にいた。つまり、あの瞬間に封印を破れるのはたった一人だけだ」

ヴァルトルは一度、何かに耐えるように強く歯を食いしばって。重苦しく、けれど悲痛な声で、言った。


「……なあ、リーブ。――タイガは、どこにいるんだろうな?」

今でもどこかで生きていると信じている、大切な仲間の名。

その声は、どこか懇願に似た響きを持っていた。



それから間もなく。

――…ロック達は響界へ到着すると、そのまま大部屋へと移される。それはギルドマスター達がいつも使っている会議室だった。

床から天井まで幾重もの段を造っており、ロック達は床近く、ギルドマスターに見下ろされる形で座っている。


ロック達がここまで連行された理由。それはベルク山での事だった。
エリィの詩によってベルク山の中腹はふたつに裂かれ、その中にはフェアトラークが安置されていたというが……ロック達はそれを放置して来てしまった為だ。
つまり、事情聴取という事だろう。


「……話さなきゃいけない事が、あります」

ロックはエリィと目を合わせ、揃って頷く。胸の鼓動がだんだんと存在を強く主張してくるけれども、それでも言わなければいけない事が沢山あるのだ。


この世界の事。
エリィの事。
そして……ロック自身の事を。


ロックはギルドマスター達を見上げる。そこには養父始め、自分を拾い本当の子供のように育ててくれた人達の顔があった。
皆一様に浮かべているのは、心配そうな表情。それは自分へ向けているものなのだと、自惚れてもいいだろうか。

自分の出生の理由。自分がそもそも人間ではなかったという事を聞いても、それでも、この人達は変わらずに自分を見てくれるだろうか?


「……」

ロックは一瞬だけ顔を伏せる。そして涙が出ないように、ぎゅっと目を瞑った。

「…ロック」
「……大丈夫。大丈夫だよ」

隣のエリィにそう笑いかけ、ロックは覚悟を決めた。


――…そして、ロックは。エリィは、告げる。

自分達が今、話さなくてはならない事を。その全てを。




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あきゅろす。
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