element story ―天翔るキセキ―
確固たる違い
「わたしとロックの身体を構成しているエレメントは、確かに女神イリスが持っていた虹色のエレメントなんだけど……おかしいところ、あるよね?」
「……結論から話せ。まどろっこしい」
セイルもまた、気が付いていないようだ。微妙に苛ついているように見えるのは、生来彼が短気だからだろう。
「結論から…えっと」
少し言葉を選んでいるのか、エリィはゆっくりと説明する。
「わたしとロックがもし、完全に同じ力を持ってたら、それはおかしいの。だって、ロックはわたしと違って耀聖術は使えない。それどころか、普通の魔術を使うのにも体内エレメントをかなり消費するんでしょ?
――…ロックは確かに、わたしと同じように虹色のエレメントロックから生み出されたものなんだけど……その部分が、決定的に違うの」
「…! た、確かにそうですな!」
「ロックはエレメントオーブで体内エレメントを補強してはいるけれど、それでも他の魔術師に劣るものね」
「うっ……確かにそうだけど…」
あんまりハッキリ言われると傷つくのだが、アリアはそんなロックの反応を清々しいまでにスルーした。
「貴方の中で、これかもしれないという仮説はないの? 証拠がなくてもいいわ、今は少しでも情報を集めるべきだから」
「そうだな…どうだ? エリィ」
「う…ん」
エリィは少しの間考えてから。
「女神イリスはわたしともうひとりの人形を創った後、眠りにつく前に自分の力を世界中にバラまいたの。その中に、さっき言ったフェアトラークと……虹色のエレメントロックが六つあったはず。
その内の四つが、ロック達のお養父さん達が持っていた『神の与えし叡智の欠片』って呼ばれてたものだと思うの」
「いや、『神の与えし叡智の欠片』はもう一つある。響界代表、ヘリオドールが所持しているものだ。形状は不明だが…」
「そうなの? それなら、残ったあとひとつが、ロックの持つ…ううん、ロック自身でもある虹色のエレメントロックの筈だよ」
ロックはエリィの言葉に目を見開いた。ずっと持っていた虹色のエレメントロックが、『自分自身でもある』と言われた為だ。
「わたしはあくまで人形として創られたけど、ロックはどうして今まで人間として生きてきたのか分からないよね?
それはつまり、女神イリスの意思とは全く無関係な意思が働いてたんじゃないかって、わたしは思うの」
『……エレメントには意思がある』
――…それは、ロック達だって知っている話だった。
エレメントにはそれぞれ意思があり、精霊はそれらを総括する存在で。
魔術師が召喚する使い魔は、その魔術師の意思に同意したエレメントが形を成したものであるという事を。
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