element story ―天翔るキセキ―
もう大丈夫
「な?」
強張っていたロックの顔が、少しだけ和らいだ事に気が付いたのだろう。シングはいつも通りの快活な笑みを浮かべた。
「大丈夫だ。ロックはオレ達と同じなんだから。……それに」
シングはエリィを一瞥し、またすぐにロックへと視線を合わせ。
「――…エリィの事、信じたいだろ?」
「……! …うん。…うんっ!」
ひとつ頷いて。またひとつ、今度は力強く頷いて。
「シング…ありがとう。――…エリィ、皆。僕はもう大丈夫…だから。だから、話……続けて」
「ロック…いい、の?」
エリィの顔は驚きや悲しみ、色々な感情はない交ぜになったようだった。
ロックは彼女のそんな表情を見てようやく、今まで彼女が何を躊躇っていたのか、自分に話すのに何を恐怖していたのかに気が付いた。
「うん」
出逢ってからまだ日は浅いけれど。エリィには今まで、あらゆる面で弱い自分を見せていた。
(…本当の事を知ったらきっと、僕が悲しむんじゃないかって。そう思ったから、)
あれだけエリィは怖がって、震えていたのだと。ロックはそう確信した。だからロックははっきりと頷く。頷いて、もう大丈夫だという意思をエリィに示したかったのだ。
――…本当は自分は人間ではない、だなんて。
今だって、怖い。怖いけれど、ロックはなけなしの安心感とプライドと勇気を振り絞って、エリィに強く頷いてみせた。
「……分かった。…ありがとう、ロック」
エリィは少しだけ顔を綻ばせて、他の四人を見回す。
「シングも、ありがとう。……リピート達は続き、平気?」
「…ええ。異論はないわ」
「……ああ。ロックがそう言うなら、俺個人には問題はない」
「り、リピートだってちゃんと最後まで着いていくですな! ……ムズカシイ話は苦手だけど」
リピートの頼りない発言に、シングやロック、エリィがくすりと笑い、アリアやセイルが呆れたように溜め息を吐いて。
少しだけ、張り詰めていた空気が和らいだのを、ここにいる六人全員が感じていた。
「――…ロックとわたしが同じ、ってさっきは言ったけど。実際には明確な違いがあるの」
「……確かに、そうね」
「ふぇ? な、なんですな?」
「……もしかして」
予測出来ている者とそうでない者に別れている中、ロックはひとつ思い出した事がある。
「さっき言ってた…体内エレメントのこと?」
「そう」
エリィは一息ついてから、再び話し始める。
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