element story ―天翔るキセキ―
『同じ』、だから
――…ずっと、『どうして』と思っていた。
自分を捨て、虹色のエレメントロックを残して消えた親に。どうしてそんな事を、と。どうして自分を捨てたの、と。
その疑問はいつだって心の片隅に居座りくすぶっていて、いつかそれが晴れる日がくるのではないかという希望を持っていた。
本当の両親との再会――そんな希望を。
しかし。その希望は、予想だにしない真実に打ち砕かれた。
「――…ど、…どう、いう…」
「………」
震える声。色々な言葉が浮かんでは消え、口から出せないでいるロック。そんな彼をエリィは悲しそうな目で見据え――…やがて、視線に耐えられなくなったかのように俯いた。
「……え、エリィ…その、どういうことなのか……」
あまりに現実味を感じられなくて、リピートは混乱したように他の人間を見回した。だがその反応はセイルやアリアも同じだったようだ。皆が皆、戸惑いや疑念やらが混じり合い、混乱している様子だ。
「……エリィ、とりあえず。話、最後までしてくれるか?」
「! シング…」
再び訪れた沈黙を破り、話の続きを促したのはシングだった。シングはひとり、顎に手をやって考えているような仕草を取っている。
「――…ロックが人間じゃないって、そんな風に言われて…確かにオレもすぐには信じられないけどさ。エリィが嘘吐いてないってのも、皆分かってるだろ?」
「で、でもですな、シング…。正直…その、エリィの言ってることがホントなら……」
彼の言っている事――エリィが嘘を吐いていない事――は皆分かっているけれど。リピートは言い淀む。
なぜなら、それを認めてしまうという事は。
「……ロックが、」
人間ではないという事を、認めるという事になるのではないか。リピートはそこまで言えずに、口を噤んだ。
「……ロック」
「……シング…僕は、……」
まっすぐに見つめて来るシングは、何を考えているのだろうか?
混乱しきったロックはそれが全く理解出来ず、怯えにも近い感情が心の底から溢れ出して。何も言えなかった。
「…ロック。今、怖いか?」
「……うん」
「正直な気持ち、それだけか?」
「……分からない」
諭すような、けれど優しい声。それは今までと全く同じ、自分を助けようと、見守ってくれるシングのものだとロックは感じた。
「…うん。そうだな。オレも今、よく分からない。どうしたらいいのか、どう考えればいいのか分からない。……冷静ぶってるけどさ、オレも皆と…ロックと同じだよ」
「…! おな、じ…?」
――…同じ。皆と同じ。自分も、皆と同じ。
ロックにとってのシングは、いつだって自分を導いてくれる指針のようだった。けれど、そんな彼の本音は自分と全く変わらない『分からない』というもので。
そしてその『ロックと同じ』という言葉は、ロックの心に深く浸透していく。なぜか。きっと僅かながらに安心したのだろう。
――…自分が、『人』と同じ感覚を……心を持っていた事に。
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