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element story ―天翔るキセキ―
『同じ』



「――…わたしは、女神イリスの『器』の人形。本来なら、『魂』の人形が女神を復活させる準備を終えるまで目覚める筈のなかった人形なの。

…それなのに、どうしてわたしはひとりでに目覚めたのか」


エリィが語るのは、ロック達にとって非常に途方もない話であった。
だが、これで今まで感じていたエリィへの疑問は確かに解決されるし、何よりエリィの真剣な声や表情が、これは真実なのだという事を実感させる。

――…なぜ、エリィは予定よりも早くに目覚めてしまったのか。

その答えは、既に全員が持っていた。


「…ロック、ね?」
「……うん」

エリィは間を置いて頷き、続ける。

「予定外の要因で目覚めてしまったわたしは、その弊害なのか『自分の使命』がなんなのか分からなくなっていたの」

予定外の要因。それによってエリィは早く目覚めてしまい、自分の使命を暫くの間喪失していた。
元々、女神が復活した際の器――肉体となる為に創られた存在だったのもあり、感情と呼べるものがほとんどなかったのだ。


「――…ロックが持っていた、虹色のエレメントロック。それに込められた力に反応して、わたしは目覚めたの」
「…!」

やはり、そうだったのだ。ロック達の中にあった疑問や疑念が、次々と紐解かれていく。


「女神イリスは万が一わたしが早く目覚めてしまった時の為に、わたしの中にひとつの人格を植えつけたの。女神を復活させる為の使命だけを優先させる……それが、ベルク山で出てきた『わたし』」

「!」

それを聞いて、ロックはエリィと初めて逢った時の事を思い出し、ハッとする。
あの時見た、光の灯っていない瞳。あれはつまり、エリィであってエリィではない人格だったというのか。


「……」

それを話し終えると、エリィは暫く口を噤む。そして再び深呼吸をしてから、ゆっくりとロックを見据えた。


「わたしは最初、ロックが耀聖術を使えない、体内エレメントが足りないからって言われておかしいなって思った。わたしから見たら、ロックはわたしと同じだったから」


(――…え?)


「……おな…じ?」


ロックは思わず聞き返していた。エリィが言った、『わたしと同じ』の意味。それがつまりどういう事なのか。

――…心臓の鼓動が、否応なしに早くなる。どうしてか。いや、もしかしたら自分は、はじめから心の底では分かっていたのではないか――…?
……そんな錯覚さえ覚えた。


痛ましい表情を浮かべながら、エリィは口を開く。



「ロックは、人間じゃない…。わたしと同じように虹色のエレメントで創られた、人と似た別の存在だったから……」



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あきゅろす。
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