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element story ―天翔るキセキ―
女神イリスの試練


――…虹色の光が消え去った時、人間達は違和感に気付く。

なぜだか身体が気だるく、立っているのにも辛さを覚える程。
次々と膝をつき女神イリスを見上げる人々は、一体何が起こったのか、それぞれ戸惑いの表情を浮かべていた。


『貴方達の身体を構成していたエレメントを、半分だけ世界に帰しました。これで世界の均衡は保たれる事でしょう』

――…その時、悲鳴が上がった。人間達がその声のした方へ振り向くと、そこには人ならざるモノがいた。

それは人を蹂躙せし――魔物。女神イリスが人間に与えた試練のひとつであった。


『人間よ。私はこれから、四百年の間だけ眠りにつきます。その間、貴方達はどんな手を使って生き延びても構いません。人間同士で戦おうが何をしようが、私が干渉する事はないでしょう。

――…ですが』


女神の声を、その時どれだけの人間が聞いていただろうか。

エレメントクリスタルから生まれた一体の魔物によって、悲鳴を上げながら人々は逃げ惑う。
中には相対する者もいたが、今まで使えていた筈の魔術もなぜか不発に終わり。結局は他の人間と同じように、地を這って逃げていく。
逃げられなかった人間は、魔物によって血を流し、命を落とす。死んだ人間の身体は抜け殻と化し、魂はエレメントとなって世界に帰っていく。

阿鼻叫喚のその光景は、まさに地獄絵図だった。


しかし、女神は言葉を紡ぐのを止めない。生き延びる為に愛する者を捨てて逃げる者にも、逆に愛する者を庇い自ら魔物に向かう者にも、分け隔てなく。哀れみの目すら向けて、女神は続けた。


『私は貴方達の目のつかない地に、ふたつの人形を創ります。ひとつは『魂』を司り、ひとつはその魂を受け入れる『器』。それらは四百年の後に目覚め、私を再びこの世に目覚めさせるでしょう』

そして、これが。もうひとつの、人間に女神が与えた試練であった。


『――…私が、再びこの世界を見た時。その時、エレメントがまたしても脅かされていたならば。

私は容赦なく、貴方達人間を切り捨てる』


女神イリスは、そう言い放つと。

虹色の光となり、いくつもの軌跡を描いていずこかへと消えていった。


――…その時、女神イリスが世界の至る所に残したのが『フェアトラーク』。各属性エレメントを司る精霊の力――大きな力を宿した石。

それらが女神イリスの復活の為に必要なものであるという事実は、いつしか人間にとって共通認識となり。

後世の人間が誤って復活させないよう封印を施し、またそれらの位置を記した書をいくつかに分けて残したのである。




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