element story ―天翔るキセキ―
世界の真実
「約束した通り……わたしが知っていること、伝えなきゃいけないこと、全部…話すね」
最初に口を開いたのはエリィだった。エリィは周りに座っている五人を見回し、ひとりひとりの顔をゆっくりと見つめる。
「……」
すう、とエリィは深く息を吸い、吐いた。いくら覚悟を決めたとはいえ、いざその時間が来たら緊張しているのは仕方がないだろう。
部屋からはそう遠くは離れていない筈なのに、皿を洗うカチャカチャという音が随分と遠くに聞こえる。
ロック達は六人でテーブルを囲んで座っており、皆それぞれ緊張の面持ちだ。
「……話、まとめても長くなる。けど、頑張って話す…ね」
暫くの沈黙を裂き、エリィは語り部となる。
そして紡ぎ出す。この世界の、真実を。
――…この世界には始め、生命はいなかった。
いたのは、たったひとつ。神だ。
女神イリス――…その身は虹色の光に包まれていた。虹色のエレメント…万物を創りし、はじまりのエレメント。
女神イリスが右手を翳す。するとそれらは、赤や水色…全部で七つの色に分裂した。これが現在で言う各属性のエレメントである。
エレメントはそれぞれ意思を持ち、それぞれが女神イリスの指示に従って『世界』を象り始めた。
そうして、エレメントが世界の原型を創り出した時――『人間』が生まれた。
人間はエレメントが世界を創るのに掛かった時間よりも、圧倒的な早さで増えていく。四百年も経てば、その数はもう世界から溢れ出してしまう程に膨れ上がってしまっていた。
この現状に女神イリスは胸を痛める。
女神が存在する限りエレメントは無限に創り出されていくが、人間の数が増えすぎた為に時間が足りない。エレメントの生成にかかる時間と、人間がひとりまたひとりと生まれる時間には多大な差があったのだ。
結果、人間は衰退の一途を辿る。そして極限状態となった人間が取った行動が、
――他者の蹂躙、だ。
人間は衰退すると同時に手に入れた力――現在で言う『魔術』で、他者の命を奪い自分達の生きる為の資源を得ようとしたのだ。
本来生きる為に最優先で確保しなければいけないエレメントが、魔術の行使によってさらに消費されていく。女神イリスは、このままでは人間どころか世界も消えてなくなってしまうと嘆いた。
…もはや、手段は選んでいられなかったのだ。
『――人間よ、私の声を聞きなさい』
その時、女神イリスは降臨した。そして、生きようとする人間にとって非常に残酷な言葉を告げる。
『貴方達人間の所業は、この世界全体を脅かしています。私は女神として、これ以上世界が穢され蹂躙されて行くのを見過ごす訳にはいかないのです』
その為に。
『――貴方達人間に、試練を与える事にします』
そう告げた女神イリスは、自らの力で創り出した虹色の矢を地上に放つ。
虹色の軌跡を描いた矢は、地上に落ちたその瞬間に世界全体を包み込み、目映く輝いた。
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