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element story ―天翔るキセキ―
精霊のちから―3

――仲間と離れた場所に居るロックやエリィも、この鳴動を感じていた。

「!! な、何!?」

よろめいたエリィを助けつつ、ロックは辺りを見回す。
震動は大きく、天井に亀裂が走る。ドーム状だった部屋が形を失い、たやすく崩れていく。

「まずい……このままじゃ」

洞窟が崩れ落ちようとしている今、自分にとって安全である海中に逃げなければいずれ生き埋めになってしまう。

――しかし、エリィはどうする?
彼女を置き去りになど出来る訳が無い。
抱えて泳ぐ事は出来るが、此処は海面よりも海底に近い場所。海面まで彼女の息が続くかどうか。

(どうすれば……どうすれば!!)

気は焦るばかりで、妙案は浮かばない。


「……ロック、どうしたの?」

その時、頭を悩ませるロックの耳にエリィの声が届いた。
そちらに顔を向ければ、何をしているのか分からないとでも言いたげに自分を見ている彼女の顔があった。

「どうしたの……って……」
「何かあったの?」
海を思わせる碧色の瞳にはただ目の前に居るロックを映すだけで、何の感情も浮かべていないようにも見える。

「……エリィには、僕が何をしているか分からないの?」
「うん」

首を傾げる彼女の反応は、まるで生まれたままの赤子のようで。
さぞかし自分の姿は滑稽に見えるのだろうな、とロックは達観したような気になった。
そのお陰か幾分冷静にもなる。

(僕が冷静にならなきゃ、ダメだもんね)
この少女は何も知らないのだから。

「……このまま洞窟に居たら、いずれ君も僕も生き埋めになっちゃうでしょ?だから早く脱出しなきゃいけないんだけど」

ロックがそう言い終えた時、崩れた岩盤が部屋の出口を塞いだ。

「……塞がれちゃった」
「?」
「エリィ、水中でどれくらい息止めてられる?」

未だきょとんとしているエリィにに問いかける。
しかしエリィは「いきを止めるひつようがあるの?」と即答。それどころか、「ロックは水の中でいきできないの?」と質問を重ねてきた。

「その言い方は……エリィも水中で呼吸出来るの!?」
こくり。エリィは確かに頷いた。
ロックは驚きを隠せない。自惚れている訳ではないが、まさか自分以外にもそんな人間が居たなんて。

――しかし、それなら話は早い。今ならまだ脱出出来る。
魔術かレイピアを使って、人ひとりが通れるくらいの穴を空け、そこから海中に出れば……!!

「この揺れじゃ、シング達の所も……」

「しんぐ?」

「僕の友達で、ギルドの仲間でもある人達。みんなは僕らみたいに水中で呼吸は出来ない」

この洞窟が崩れる前に脱出したとしても、彼等は溺れる可能性が出てくる。
いや、此処が海底に近い場所と考えればその可能性はかなり膨らむ。
――自分だけで、彼等四人を助けられるだろうか……。そうロックが不安を感じた時だった。


「そうなの?それじゃあ……――ウンディーネを呼べば?」



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