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element story ―天翔るキセキ―
こわいモノ

オブシディアン曰く、任務の帰りに見つけ、そのまま拾って帰ったとの事だが。まさかその行動が、響界全体に関わる事件の要因になるとは。

「エルがあんな目に遭ったのは、ある意味オレが元凶って言ってもいい筈だし。だからオレの事を避けてんだろうなって思ってたんだけどねえ。なんだ、知らなかったのか」
「は、はい…」

元凶。確かにそうとも言える。けれどエルは、そんな風にオブシディアンを責めたり憎んだりは出来なかった。

もし彼に拾われなかったら、自分は今生きてるかもわからない。それにベリルとも出逢えなかったし、そもそもまさか保護した子供が実験体にされるなんて想像も出来なかっただろう。恩を感じこそすれ、恨むような謂れはなかった。


たどたどしくもエルはそう伝えるが、次に来た返答にはかなり悩まされる。

「んじゃあ、何でオレの事を避けるの? …言っとくけど、避けてないですーってのはナシね。これでも人の挙動はよく見てるつもりだよ、元々の職業柄ね」
「うっ…」

逃げ道をあっさり塞がれてしまい、思わずエルは口ごもった。
確かに、何気なく避けていたのは事実だけれど。バレていたなんて思っていなかった。今思えば、なんて浅い考えだったのだろう。彼は気付いていたが、今まで言及してこなかったというのが真実だったのだ。

「…あ…あの、…どうしても、言わなくちゃだめ…ですか?」
「んー…そうだなあ。一応気になるし、出来れば聞きたいな」
「……」

オブシディアンは人好きな笑顔を浮かべている。それを目にしたらますますエルは言い辛くなってしまう。

「……」

が、向こうも待つようにこちらを見つめて来た為、やがて根負けしたエルが口を開く形となった。


「…その、…シディさんの…笑顔…が」
「オレの笑顔が?」
「……な、…なんとなく……こわく…て」
「…ふーん」

怖い、というのが適切な表現かは分からない。エルは先の教養の問題や、身に宿す異能の関係もあってか、感覚的に物事を見る。
が、逆に論理的に考えたり、その中から適切な答えを導き出して相手に伝えるのが苦手なのだ。

「す、すみません…こわい、って言ったらいいのか分からないんですが…でも…その」
「別にいいよ。正直に答えてくれてあんがと」
「い、いえ…」

オブシディアンは笑顔を崩さない。が、纏う雰囲気は僅かに変わった気がした。
それが呆れなのか怒りなのか、はたまた全く別の感情によるものなのか。エルにはまるでわからない。



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