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element story ―天翔るキセキ―
もう、二度と

「…エル…ごめんなさい。こんな目に合わせてしまって」
「…いいえ。ぼくは何にも…気にしていませんから…」
「…ベリルも、ごめんなさい。貴方にとっても、エルは妹…大切な存在なのに。私達のせいで、傷つけてしまったわ」

エルとベリルに詫びを入れて、カヤナは一度ふうと重い重い溜め息を吐いた。
「…!」
そして立ち上がり、…傍らの弟に顔を向ける。ロウラを見つめるカヤナの目は、やはり激情に染まっていて。ロウラは縛り付けられたように身動き一つ取れなくなる。

…姉が、ロウラに対してここまで怒りを露わにするのは初めてだったのだ。

「ロウラ…私の言いたい事は、分かっているわよね…?」
「カヤおねえ、ちゃ…」
ロウラのか細い声は、姉にあえなく遮られる。

「――…もう二度と、あの人形には近付かないで」
「!」

ロウラは目を零れんばかりに見開く。…予想はついていた。ついていたけれど、それでもショックを隠せなかった。

…ロウラは、エルの怪我が完治して安心した。そして、それを治したのがあの少女だった事を知り、少なからず期待したのだ。姉があの少女を、ロウラにとってのエリアを許してくれる事を。

わざわざ怪我を治すなんて、そこには何らかの意図があるとしか思えない。ロウラにとっては、それがエリアという少女の『情』としか考えられなかったのだ。

ロウラは思わず立ち上がり、姉に反論する。

「…でっ、でも! カヤおねえちゃん…っ、エリアは…!」
「まだそんな事を言っているの!? …もしかしたら、貴方は殺されていたかもしれないのよッ!?」

もしもあの時、エルが多大なエレメントを視て、ロウラの元へ行かなかったら。

…ロウラは間違いなく、あの人形の魔術を喰らって死んでいただろうと。カヤナにとって、それは最悪の結末に他ならなかった。

「エルも無事だったから良かったけれど…もしかしたら、本当に死んでしまっていたかもしれない…! 貴方はそれに対して責任が取れるっていうの?!」

責任。その言葉は酷く重かった。
しかしロウラにとっては、『あったかもしれない未来』と『現実にあったこと』を等しく考える事は出来ない。

「でも…っ! エルは大丈夫だったんだよ? それはエリアのおかげだよ!」
「エルを傷つけたのは、そもそもあの人形でしょう! 論点をすり替えないでッ!」
「…っ!」

…確かに、姉の言う事は正論だ。だが、けれど。ロウラの心には未だ、あの少女を信じたいという気持ちがあった。いきなりあんな事をしたのは、きっと自分の発言が問題なのだと思った。

友達…だなんて、まだまだ言うには早すぎたのだと。だからそれを謝りたいとすら考えていた。



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