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element story ―天翔るキセキ―
虹色の少女

目の前に広がった光景は、とても美しいものだった。
大部屋のあちらこちらに虹色のエレメントクリスタルがあり、その一つ一つがきらきらと輝いている。まるで星のかけらみたいだとロックは思った。


しかしロックの目にまず留まったのは、大部屋の最奥――天井まで伸びた巨大なエレメントクリスタル。それは、他のどのエレメントクリスタルよりも鮮やかな色合いに煌めいていた。
色も印象的だが、こんなに巨大なエレメントクリスタルなど見た事も聞いた事もない。

(…――きれいだ)

だがロックが何よりも見惚れたのは、この部屋の幻想的な光景では無かった。


――彼が見惚れたのは、たった一人の少女だった。
少女が、エレメントクリスタルの中で眠っていたのだ。
少女の姿が鮮やかな虹色に透けて、その神々しい姿はまるで神が創り出した天からの使いか、精巧な芸術品のようで。

ロックはレイピアを鞘に納め、そのまま惹かれるようにエレメントクリスタルの……少女の下へ歩み寄る。

「この子は一体……それに、このエレメントクリスタルは……!」
エレメントクリスタルに触れたその時、腰から提げた道具袋が光を放つ。

――慌ててロックが取り出したそれは、拳大の虹色のエレメントロックであった。

やがて、エレメントロックは少女の居るクリスタルと共鳴するようにお互い明滅し始めた。
間もなく他のエレメントクリスタルも明滅を始め、一つのリズムを刻むように明滅が段々と速くなっていく。

「……――っ!!!」
視界がニジイロに染まり、反射的に目を庇った。
そして鈴の音のような……透き通った音が辺りに響き渡る。


……――恐る恐る目を開けてみると、少女の居たエレメントクリスタルは――割れていた。否、跡形もなく消えていたと言った方が正しいだろう。周囲の他のエレメントクリスタルも同様だった。

エレメントクリスタルが消えたことで、少女は支えを無くした。
金色の髪を波のように揺らしながら、少女は落ちていく。

――その瞬間は、まるで全ての時間がゆっくりになったような、コマ送りで時が進んでいるような。
そんな奇妙な感覚を覚えた。


「――あっ!」

ロックは暫し呆けていたが、このままでは少女が地面に叩きつけられてしまうと気付き、彼女を慌てて受け止めた。

「…この子は…」

固く目を閉じた少女は、華奢な体型、小さな身体にたっぷりと蓄えられた金髪を持っており、その姿形からロックよりも年下の十四、五歳程に見える。

ロックはそのまま視線を顔から下に向け、驚愕に目を見開いた。

「…――!!」
それは、エレメントクリスタルの中に居た時と変わったことが有ったから。

――少女はロックの持つそれと同じ…虹色のエレメントロックを、ペンダントのように首から提げていたのだった。

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あきゅろす。
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