element story ―天翔るキセキ―
紋様の石
フィアーニに乗り、タイガ達は大地の裂け目からゆっくりと降下していく。するとそこには、大人でも容易に通れる大きさの空洞がぽっかりと空いていた。
タイガ達はフィアーニから降りてその中へ迷いなく突き進む。長い長い一本道。幾つものエレメントクリスタルが道端に咲き乱れていた。だが、入口近くは土色をしていたそれは…進んでいくと碧色――水のエレメントクリスタルに変わっていた。
それはつまり、この場が水のエレメントで満ちているという事。
「…あれか」
そしてついにタイガ達は、目的地へと辿り着く。
そこには岩で造られた何かがあった。
ぱっくりと口を空けた四角い岩。その両端には水のエレメントロックが置いてある。
まるで何かの祭壇のようだった。
岩の口の中から、青い光が見える。それは両端にあるエレメントロックと同色の、深い海色をしていた。
近付いてよく見てみると、そこには小さな石が密かに座している。
幾つもの紋様が刻まれたこの石。これはエレメントロックではない。
だが、今のタイガ達はこの石を何より求めていた。
タイガは再び宝剣を手にして、逆の手で石を掴み取る。
常にぼんやりと発光している謎の石は、そのままタイガの手の中に収まった。
「…よし」
タイガは後ろで見ていたアッシュとオブシディアンを振り返る。
「帰るぞ」
もう、ここには用はない。タイガ達は祀るものが無くなった祭壇に背を向け、歩き出した。
――…それから数時間後。ロック達は、同じくベルク山へと辿り着いていた。
山の麓へと、エリィの喚び出したフィアーニから六人が降り立つ。
「ここがベルク山ですな?」
「ああ。間違いないな」
地図を確認し、シングは頷く。
「エリィ、大丈夫? 疲れてない?」
前回のようにかなりのスピードを出して来た訳ではないけれども、前回と違い六人も運んだのだ。使い魔は現れている間は召喚者の体内エレメントを常に消費して動いており、また使い魔の負傷や疲労は、使い魔が役目を終え消えた際に全て召喚者へと還元される。そして逆もまた然りだ。
エリィは「うん、大丈夫」と頷き、
「この前のは、傷の治癒が大変だったの。普通の魔術ならそんなに疲れないから」
曰く、魔術を使うだけなら大した疲労にはならないらしい。問題が傷の治癒や、アリアに行ったような自分の体内エレメントを分ける行為だとエリィは説明した。
「治癒とかは『これ』、使わなきゃいけないから」
そう言ってエリィは自分の胸元に手を当て、服越しに虹色のエレメントロックに触れる。
「そのエレメントロックの力、貴方自身は全て把握しているの?」
「?」
「…つまり、そのエレメントロックが他のものと同じように何らかの属性を持っているのか、とか。そういう事を聞いているの」
アリアの補足にエリィは眉を顰めた。と思えば、僅かに俯いてしまう。
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