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element story ―天翔るキセキ―
未来に希望を

「それから、僕は魔術に打ち込みました。響界の内側から、魔術師の意識を変えようと思ったのです。…タイガ様、僕と会う前に年の離れた姉弟と会いましたよね?」
「あ、ああ…」
「僕は響界使者として、とある村の視察に向かいました。そこは魔術師の家系は全く存在しない、珍しい村でした。そこで僕は彼女ら姉弟と出会ったのです」

あの姉弟は、魔術の才を持たない。その村にはそんな人間しかいないのだという。

「僕はあの姉弟と話して、やはり感じました。魔術師と一般人の隔たりは、親友との別れから数年経っても緩和するどころかさらに酷くなっていたのです。その村の人達は、裕福な暮らしとは程遠い生活を送っていました。ギルドや響界からやってきた魔術師に、みすぼらしい村だと蔑まれる事も珍しくないそうです。


…何故、でしょうか。

…何故、こんなにも大きな隔たりがあるのでしょうか?

僕達魔術師と彼女らに、何の違いがあるのでしょうか?」

「………」


――タイガには何も答えられない。リーブの問いへの答えが、何も見つからなかったのだ。



タイガはそれからも、リーブの話を聞いた。
響界から脱走した断罪者の青年が『狂ってしまった』話や、魔導具技術者でありながら少女を庇い救った女性の話、そしてそもそもこうしてタイガがここに流れ着く原因をつくった少女の話。


それらを聞いて、いつしかタイガはリーブ達に協力する姿勢を取っていた自分に気付いた。
何故だ、と思えば。

幼い子供達や、世界を変えようとしている若者達の背負っているものが、あまりに大きく痛ましくて。見ていられなかった、という単純な理由だった。
それに加え、未来を諦めて、何もかもに無頓着であろうとする者達がいたのも大きな理由のひとつである。

若者達は、未来に希望を持つべきだとタイガは思う。
例えどんな理由で生まれたとしても、どんな過去を持ったとしても。未来とは、自分でつくれるものだから。

だから、タイガは彼等に希望を持って欲しかったのだ。自分が加わって、少しでも若者達を支えられたら…未来に希望を抱いて生きてくれれば…と。


タイガは、そうしてリーブ達に協力する事を決めた。
仲間達から、人々から背を向ける道を…選んだ。





――東大陸・ベルク山。


タイガはアッシュやオブシディアンとともに、目的地に向けて歩を進めていた。
ごつごつとした地面に足を取られないよう、落ち着いて山を登っていく。おまけに道幅が狭い為、タイガを先頭に一列に並んで歩いていた。


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あきゅろす。
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