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element story ―天翔るキセキ―
関係の終わり


「――…僕の無二の友人。あのふたりは、いつしか恋人同士となっていました。男は不器用に彼女に触れ、彼女は笑顔で男に寄り添っていた。僕は寂しさを覚える事もあったけれども、二人が僕を無視したり、疎ましく思う事は決して無く、友人関係が崩れる事はありませんでした。

…しかし、それが男の両親に知れた時、僕達の関係は終わりを告げたのです」

異常に息子を寵愛する両親。彼等の行為は、人から外れていた。

リーブは何度も口を開き、その先を話そうとして、…しかし閉じる。彼の中でも、その先の話は決して過去になっていないのだとタイガにもわかった。


「……男の両親は、彼女を…殺しました」
「…!!?」

時間をかけて、ようやくリーブが放った言葉。
それはタイガの心を激しく揺さぶった。まさか、と疑う程に。

確かに、魔術師の地位にこだわって一般人を下に見る人間は一定数いる。そんな人間を、タイガだって何度も見てきた。自分の部下にだって少なからずいる程だ。が、殺しだなんて流石ににわかには信じられない。…いや、信じたくなかった。

リーブはタイガの感情を察したのだろう。
「信じられないのは、解ります」と力なく笑って。

「…実際には、証拠がないのです。僕達が見た時には、既に、…彼女は事切れていて。
証拠も目撃者もいない、ただ可能性のひとつに過ぎないと、実際男の両親は罪に問われませんでした。
それが、愛する人を失った男の逆鱗に触れたのです」

リーブは目をかたく閉じ、胸に当てた手をぎゅっと握り締める。

「彼は、怒りに身を任せて暴れまわった。両親に手をかけようとして…それはいけないと止めた僕に、彼は初めて…剣の切っ先を向けて来ました。


…結局。彼は魔術師である自分を捨て、両親を殺す事もなく、僕の前から姿を消したのです」

数年後、再会した頃には。彼は魔術師を憎む剣士として生きていました、と。リーブはそう過去を結んだ。

タイガはその時気が付かなかったが、リーブが語った男と、この孤島で出会った剣士の青年が後に同一人物である事を知った。



「僕は彼が去ってから、大切な人が二人も同時に消えてしまった空虚感と暫く戦っていました。そして、思ったのです。

『どうして、こんな事に』と。
『彼と彼女は、どうして引き裂かれてしまったのだろう』と」

一度抱いた疑問は、消える事はない。消えるどころか、次々と湯水のように沸いてきたという。

魔術師と一般人に、どうしてこのような隔たりがあるのか。それを疑問に思ったのは、この経験からだとリーブは語った。



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