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element story ―天翔るキセキ―
ある幼馴染達の話

ヘリオドールはタイガやヴァルトル、かつての仲間達がギルドマスターとなりバラバラになってから、かねてより抱えていたその思想を実現する為に響界に移籍していた。
だが、タイガは彼に会う度聞いていた。
『選民思想の根付いている響界を変えるのは、困難だ』と。

リーブも当時は響界に身を置いており、彼とも親交があったらしい。二人共、同じ思想を持って響界を内側から変えようと思っていたのだ。


だが、それが困難を極めた時…リーブは、別の方法で世界を変える事にしたという。そしてその方法を実現する為、力を貸して欲しいとタイガに請うた。

「……」

しかし迷い続けるタイガ。仲間達から、自分を慕う部下達からも背を向けて、人々を裏切るような行為…ふたつ返事で応じれる筈もない。

そんなタイガに、リーブは別の話を切り出す。


「…僕が最初に、今の世界に疑問を抱いたのは随分昔からです。僕は小さい頃、僕と同じように古くから魔術師の家系である男の子と、魔術師とは何の縁もない家系の女の子。その二人と毎日のように遊んでいました」

それは昔話だった。リーブは遠い目に過去を映して、タイガに語りかける。

「男の子の方は、本当は優しいのに素直じゃない奴で、いつもぶっきらぼうな態度で口も悪い。でも女の子の方は、そんな彼の真意を見透かしていて。いつもいたずらめいた可愛らしい顔で笑うんです。そして、そんな彼女の笑みに男は機嫌を悪くして、でも本気で怒るなんて絶対にしない。いや、出来なくて。
僕はそんな二人と一緒にいるのが、何より楽しく…そして幸せでした。今でも、あの日々は私にとって…そして彼にとっても、宝物であるでしょう。


――…例え、その関係の終わりが悲しいものであろうとも」

リーブの声が落ちる。果たしてその先に、何があったのか。
知らず、タイガは固唾を飲んでリーブの話の続きを待っていた。

タイガの視線を受けつつ、リーブは重い溜め息を吐く。身体の中に溜まる悪い空気を追い払うように。
しかし、彼の表情は先程と比べて全く晴れなかった。

「男の方の両親が…魔術師である事に強い誇りを持つ人達でした。…しかし、その人達は誇りを強く持つあまり…魔術師ではない人間を蔑むのです。そしてその矛先は当然のように、男と親しい一般人の子である彼女の方へと向けられました」

一息、今度は小さく息を吸って。

「男の両親は、大切な息子が一般人の娘に関わるのが許せなかったのです。正直、僕から見ればその寵愛ぶりは…異常でした」


リーブの顔が、痛ましい歪みを刻む。


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あきゅろす。
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