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element story ―天翔るキセキ―
裏切りの要請


少女が響界という名の檻に捕らわれてから、二カ月が過ぎた頃だ。

技術者のひとり――少女をよく庇っていたという女性――が、もうひとり男の断罪者とともに、少女を連れて脱走した。
その騒ぎがギルドの人間に知れ渡った事で、代表は失脚し…現在の代表であるヘリオドールが新しい代表へと据えられた…という顛末を迎えたのだ。



――西ギルドマスターであったタイガは、その事件があってから暫くして、自らが先導して脱走した少女らの捜索任務にあたる事となった。

「タイガ様、お気を付けて…!」

補佐のランジェルにそう見送られ、タイガは二人の魔術師と共に海へ乗り出す。


…そこでタイガ達は、突如として嵐に見舞われた。さらに運の悪い事に魔物が現れ、戦いの最中に仲間のひとりが使役していた水の使い魔は力を失い、魔物は退けたもののタイガ達は全員大波に浚われてしまったのだ。



――…タイガが次に目を覚ましたのは、人気のない孤島で。

「…目、覚めましたか?」
「…!!」

自分を介抱していた女性を見て、タイガは驚愕を隠せなかった。
何故なら、彼女こそが響界を脱走した魔導具技術者の女性だったから。そして女性がいるという事で予測した通り、断罪者の青年も、人体実験を受けていた少女もこの孤島にはいた。
彼等は剣士の青年や年の離れた姉弟とともに、この孤島でひっそりと暮らしているようだった。

…が。ただ単に暮らしている訳ではないと知るのは、それから現れたリーブとの対話によって。

「…タイガ様、ですね」

戸惑う自分に会釈し、リーブは何処か痛ましくも決意を秘めた瞳でタイガに語りかけた。

いわば、それは協力要請。自分達の思想を叶える為に、力を貸して欲しいというものであった。

タイガは当然ながら、迷った。
その要請に応じるという事は、つまり、

「仲間を…ギルドの奴らを…皆、裏切れって事か」
「……」

リーブの話は、にわかには信じられない事ばかりだった。
虹色のエレメントロックの真実、そして自分が仲間達とともに拾ったあの赤子の正体はとても最初は信じられるようなものではなかった。
だが、虹色のエレメントクリスタルの中に宿る少女を見た事で、だんだんとタイガの中にもリーブの話は真実味を帯びて来る。

そして、何より。


「魔術師がこの世界を支配している、魔術師がそうでない人間を下に見て、それを当然の事のように思う。…そんな世界を、我々は変えたいのです」

リーブの思想は、奇しくも友人のひとりであるヘリオドールが掲げたものとまるで同じであったのだ。
それもあってか、彼の思想はタイガにとっても身近で。



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