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絵描きな僕とオタクな先輩。
憂鬱な気分

先輩から頼まれた事は、ふたつ。

『昼休み、活海君と会って『遠山先輩が呼んでいるから放課後会って欲しい』と伝える事』。

そしてもうひとつ、『放課後、活海君を連れて先輩の待ついつもの教室へ行く』事だ。


…確かに僕は、僕に出来る事なら協力すると言った。それに嘘はない。

だけど…僕は鉛のように沈んだ心を何とか引き上げようと、ゆっくりと立ち上がる。けれどもテンションが上がるどころか、すぐさま席に座り直したいと思うレベルでだだ下がりだった。


何故、こんなにも憂鬱な気分になっているのかといえば…僕が人と話すのが苦手だから。これに尽きる。

他人が聞けばそんな事でと思うかもしれないけれど、僕にとっては大問題だ。

…あれは中学生の頃だった…修学旅行の散策チームを決める時、リーダーに立候補した人がじゃんけんをしてメンバーを選んでいたけれど…。

僕は最後の三人まで残り、挙げ句の果てに『土浦はいらないんだけど』と聞こえよがしに言われたんだ。

…その後、僕と同じく余り者にされていた二人と友達になれたのは良かったけど。毎回そんな不幸中の幸いが起こる訳はなく。
似たような事は小学から中学までは日常茶飯事だった。
さすがに高校生になったら、あからさまに言われる事はないけれども…。


今回は、いくら先輩の知り合いだからといっても、僕にとっては初対面の人…。
活海さんと違うのは、相手が同い年の同性という事だけれども……それも一対一というシチュエーションのせいでプラマイゼロだ。

先輩や活海さんが言うには、いい人そうなんだけれど…。

(ていうかまず、違うクラスの人を呼ぶなんて…どうすればいいんだっ)

活海君の教室前に着いた瞬間、僕は内心頭を抱えて、心の中で叫んだ。経験が無さ過ぎてやばい…。

…い、いや落ち着け。活海君と同じクラスの人に話しかけて、呼んで貰えば…!

「ぁ…」

…ちょうど教室から出て来た人に話しかけようとしたけれど、緊張のせいか声が出ない。口どころか喉までしっかり張り付いてしまったようで、ようやく口が開いた頃には目の前には人は居らず。
教室の扉はかたく閉じていて。まるで哀れだなと嘲笑われているように感じる。
…自分のあまりの情けなさに、僕はがっくりと肩を落とした。


…どうしよう。いや、協力すると言った手前、このまま引き下がる訳にはいかないのだけれども。

「…おい」

このままじゃ活海君と話は出来ないし、そうしたら先輩の計画は実行出来ない。活海さんも悩みが解決しないままだろうし…。

(…先輩が自分で呼べばいいのに)

ついついそんな事を考えてしまう自分に自己嫌悪。思わず重い溜め息を零した。

「おい」

それにしたって、先輩は…。

『たまには同年代の男子と話した方がいいぞ。せっかくだし、友達になればいい』

…先輩はそう言って、活海君を呼ぶ役目を僕に託したけれど。先輩が考えているより、友達をつくるのは難しいですよ…と言いたい。


――…と。その時。


「……お前、聞こえていないのか?」


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