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絵描きな僕とオタクな先輩。
勘違い

「彼女、できてたの。正確にはまだちゃんとした恋人同士にはなってないって言ってたけど。…でもさ。

それからなのよ。逆人、目に見えて元気になった。しばらくして、逆人はあたしに言ったわ。

『――…もう大丈夫だから。直子に心配はかけさせない』って」

…それは。

その言葉は活海さんにとって、どれほど重かったのだろうか。僕には…分からない。

「…あーあ。あたしってやっぱブラコンなのかなあ」
活海さんは、いつしか泣きそうな顔をしていた。それを、神妙な面持ちで先輩は見つめている。

「はぁあ。これからは相談事とか、みーんな彼女に言うようになるのかなぁ。あたしだけが知ってたことも、全部見せちゃうのかなぁ。

…あたしは、いつだって逆人の力になりたいのにさ…。心配だとかそういうの、気にしなくていいのにさあ……」

「…直子」
活海さんが行く先を見失ったかのように俯いたその時、先輩が口を開いた。

「どうやら、かなり溜め込んでいたようだな。これは重傷だ」
「…あは。そうかも。いー加減、誰かに話したくなっちゃったのかな」

言って、活海さんはもうひとつ心の内を明かした。それは、

「さっき、あそこに来たのはね。もしかしたら、明日葉に会えないかなあ…なんて考えてたのよ。期待はしてなかったけど」
「そうしたら、まさかのビンゴという訳か。まるで運命の巡り合わせだな」
「…ふふ。明日葉ってホント…相変わらずの変人なのねえ」
「おっと、待て。その言葉の語尾に『だが、それがいい』を付けるのを忘れているぞ!」
「アハハッ! わかったわかった。明日葉は変人、だがそれがいい」
「ふふ。わかればいいのだ」

…いつしか、たった今さっきまで暗い顔をしていた二人は、再会した時のように笑みを交わしていた。
僕はひとり取り残されたように、今まで通り静観している事しか出来ない。何だかんだで、退出するタイミングを逃してしまった。

と。活海さんは僕に向かって、顔の前で手を合わせて。

「ごめんね、後輩くん。いきなり暗い話を聞かせちゃって。疲れちゃったでしょ。 お詫びに何か奢るわ。何がいい?」
「え…いや、その…僕の事なんか気にしなくていいですから…」
「そういうわけには行かないわ。年下の男の子に気を遣わせちゃうなんて、あたしのプライドが許さないのよ。
それに、後輩くんは明日葉の彼氏なんだから。酷い扱いなんてできないわ」

…は? 彼氏?

誰が、誰の?


……!!

なっ…よりによってなんて勘違いをッ!




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