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未来へのプレリュード
おかしな屋敷

全員と挨拶を済ませたので、ようやく掃除に取りかかることが出来た。
…勿論、掃除というのは口実で、本当は屋敷の中を物色、金目の物を探すのが目的なのだが。
事前に話し合った結果、現在子供達が集まっている一階をカル、子供達の個人部屋が有るという二階をテラが担当することになった。
二階へ行くテラを見送りながら、カルは子供達に『二階の掃除が終わるまでは部屋に戻らないように』と釘を刺しておいた。
もしも部屋を物色中にバレてしまったら面倒臭いからだ。
一部の人間には不審に思われるかもしれないが、仕方がない。

(仕事開始だ!)

密かに心を踊らせながら家具などを物色する。
勿論この階には子供達も居るので気取られないように、あくまで掃除をしている振りをしつつ、だが。

そうして暫く物色を続けた。
(……)
…が、なかなか良い物は見つからなかった。
現金ははした金しかないし、売っても大した金にならなさそうな物ばかりだ。
此処に無いとすれば二階が怪しいが、それとも…。
(どこかに金庫があって、そこに隠しているのか…?)
その可能性も考えられるな、と顎に手を置いて唸るカルの背後に…。

「…あの、カル…さん?」
…何時の間にか翠が立っていた。


「どわぁぁあっ?!」
「きゃっ!?」
「す、すみませんっ!…翠さん。何か?」
端から見ればオーバーな反応に見えるだろうか。実際は素だ。かなり驚いた。
何せ此方は良からぬ事をしている盗人であって、屋敷の住人に背後から話し掛けられるなど心臓に悪すぎる。
思考の海に浸かっていたとは言え、ただの子供(しかも女)に背後に回られるとは…カルは自分がとても情けなくなった。
…と同時に、『テラに見られなくて良かった』とも考えていたが。

驚いたのはカルに限らず、話し掛けた翠もまた同じだった。
そんなに大きな声は出していない筈だし、カルが密かに気にしている背後云々も翠としては背後に回ったというか、部屋の入口から真っ直ぐカルの元に行った結果そういった構図になっただけだ。
「い、いえ。…お邪魔したみたいで、ごめんなさい。お疲れのようですし、お茶でもと思って…」
言っておずおずとその手に持っていた物を差し出す翠。
今まで注目していなかったが、よくよく見れば翠の手にはお盆が。
お盆の上には二人分の湯呑みが乗っており、中では熱そうなお茶が揺れ、湯気が立っていた。

しめた。
カルは手っ取り早くテラと合流する手段を見つけた。
「ああ!ありがとうございます!…テラの分は私が持って行きますので」
「え?…でも」
「それでは、ちょっと失礼!」
半ば強引にお盆を奪い、カルは二階へと向かった。
それを翠は、ただ茫然と見送る事しか出来なかった。


「やっぱり変っすよね。地味とはいえ、屋敷に住んでるんだから何処かしらに金目の物が有りそうなのに」
ずずず、とお茶を啜りながらテラが言う。
二階にもめぼしい物は見つからなかったらしく、カルが考えていた金庫のような物も見当たらなかったという。

ここはいくら見た目が地味とはいえ屋敷だ。
財産は必ず持っている筈。だというのに、それらは影も形も見つからない。この不可解な状況に二人して唸る。
「くそっ、どういうことだ!このままじゃ帰れねえぞ…」
カルは苦々しげに吐き捨てた。

…何か良い手立ては無いか。


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あきゅろす。
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