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未来へのプレリュード
目覚め
カロレス。…スキルを助けてくれて、ありがとう。

──前を歩いていたカロレスが振り返る。

『どうしたんだ、いきなり?』
…だって…カロレスがいなかったら、ぼくとスキルは…。

──ぼくは…何も出来なかった。
さらわれたスキルを助けに行く力も勇気も無かった。
旅人であるカロレスに泣きながら助けを請うことしか出来なかった。臆病者なんだ、ぼくは。
そう思うままに述べると、カロレスは不思議そうに言う。

『レイサーは、俺に助けを求めるという行動を起こした。そうしなければ、俺はスキルのことを知らなかっただろうし、スキルは助からなかっただろ。…違うか?』
…でも…ぼく。

──カロレスは膝をつき、ぼくの頭を優しく撫でながら続けた。

『レイサー。人は助け合う生き物なんだ。…だから、それでいいんだと俺は思うよ』
──『人は助け合う生き物』。
その言葉が、カロレスが覚えている数少ない父の言葉だと聞いたのは、この会話のすぐ後だった──…。



重い瞼を開けると、そこには見慣れない天井。
「レイサー!」
「ぅ…うん…?」
ループが顔を出し、自分を心配そうな顔で見下ろしてきたのをレイサーは不思議な心境で見ていた。
…?何でループがこんな所に…。
ぼんやりとした頭で少し考える。

「…!!そうだ…スキルは!?カロレスはっ!?」
何故ループが自分の目の前に居るのかは解らないが、スキル達について何か知っているかもしれないと希望を込めて聞いてみる。

が、レイサーは察してしまった。
レイサーの言葉を聞いたループの表情が、全てを物語っていたからだ。

「……そっか…いないんだ…二人とも」
「…うん…」
ループが本当に辛そうな顔で言うものだから、レイサーは追究する気になれなかった。

「…あっ、あのね…今、翠達がこっちに向かってるところなんだ。もう少ししたら来ると思う」
「翠達が…」
「そ、そうなの。レイズともう一人、魔術師の人が迎えに行ってるから…」
「そうなんだ…」

……。
レイサーの呟きを最後に、沈黙が訪れる。
気まずそうに視線をあちこちに泳がせていたループは、やることを見つけたとばかりに突如立ち上がった。

「そうだ!私、水を持ってくるね!レイサーは此処でゆっくりしてて!」
そう言うが早いか、ループは勢い良く部屋から出、それとは対照的に静かに扉を閉めた。
靴音が遠くなっていくのを聴きながら、レイサーはふっと溜め息を吐いた。



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