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未来へのプレリュード
対峙



「…あっれー、レン兄さんじゃない。…そっかぁ、じゃあハズレを引いたってコトかぁ」
フロッツを模した偶像の前に立つ青年の言葉、たった今ここにやって来たカイレン達は目を見開く。
「まさか、お前…!」
「そうだよ、ボクがカロレス。…あぁ安心していいよ。まだ封印は壊していないから、さ」
紫の髪を持つ『カロレス』の姿は、カイレンの兄弟だと言われて納得出来る程にそっくりだった。
『カロレス』曰く、どうやらこの姿はかつての姿を成長させたようなものにしたらしい。
それを聞いたカイレンは眉を顰める。

カイレンの反応をどう取ったのか、『カロレス』はくすくすと笑い。
「ただ目的を達成するだけじゃつまらないし、誰かが止めに来るだろうと思って待ってたんだけど…思っていたより早く来たからビックリしたよ」
しかもそれがレン兄さんだとはね。

ルーだったらどれほど良かった事か。そう言って『カロレス』は含み笑いを漏らす。
期待に反して兄がやって来た事に口では残念だと言っているが、その声は喜びに満ちているようで不気味だ。

「…カロレス…お前は…」
「ねぇ、前にも言ったよね? レン兄さんじゃボクは止められないって。まぁ、どこの誰にもボクを止める事は不可能なんだけどさ」
『カロレス』は手を高く掲げる。神の御前でのその仕草は、まるで神の使者であるかのように芝居がかっていた。
瞬間、僅かな光の明滅と共に『カロレス』の手に握られていたのは、漆黒の闇色をした長剣。
振り上げたそれを手に馴染ませるが如く、勢い良く床すれすれに振り下ろした『カロレス』は。

「ルーがいないのは残念だけど、まぁいいや。…アイツの大切なモノ、全部壊してやるんだ」
新しい玩具を見つけた幼子のような、しかし邪悪な色に染まった笑みを浮かべ、『カロレス』は翠やリトを一瞥し。

「ほら、レン兄さん。アイツを、世界を救いたいなら、剣を取りなよ。
ボクと戦ってごらんよ」
「…っ!」

こちらに剣を向ける弟に、カイレンは歯を食いしばる。
そして長く息を吐くと、押し殺した声でリトに告げた。

「俺があいつの相手をする。何とか封印から引き離すようにするから、お前は翠と封印を守ってくれ」
カイレンの言葉に、リトも翠も目を見開いた。
「か、カイレンさん! 何を言っているんですか!? 貴方は、一人で…弟さんと剣を交えると言うんですか!」
たまらず叫んだリトに、カイレンは視線を『カロレス』に向けたまま頷く。弟は三人の様子をただ楽しそうに見ていた。

「燐火達だって戦っている。ルーだって決意している。…俺ももう、立ち止まってばかりではいられない。
カロレスがこうなったのは、俺にも罪がある。だから…」

その時、服に巻きつけられている長い白の布が、その形を持ち主の背丈程の大剣へと変える。
背に現れたそれの柄を握り締め、カイレンは『カロレス』に応えるように構えを取った。


「例え無理だと言われようが、俺はお前を止めてみせる。…何としてでも」




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